■一人の人間として自立したフラウ・ボゥ

 一貫してアムロの“世話焼き女房”的なポジションに徹してきたフラウ・ボゥだが、彼女のように世話を焼くのが好きな女性は割と多いのではないかと思う。

 このタイプの人は、母親が甲斐甲斐しく子どもの世話を焼いて慈しむように、愛情表現のひとつとして相手に尽くす。その一方で、「この人には私がいないとダメ!」と思うことで自分の価値を確認する共依存的な側面や、相手を独占したい、支配したいという心理も潜んでいると言われる。

 初期のフラウ・ボゥにも、この両面が表れていた。基本的には優しく面倒見が良いが、アムロの言動にいちいち口を出すところなんかは、ちょっと過干渉で束縛的にも感じられる。

 しかしアムロが成長するように、彼女もまた成長していく。怪我人の治療の手伝いにはじまり、民間人や孤児の世話、やがて通信士になり、上等兵にも任命されて、フラウ・ボゥはホワイトベースにとって必要な人材となった。

 そうやって一人の人間として自分の価値を確立することで、アムロに注いでいたエネルギーを徐々に引きあげることができたのだろう。

 その点でフラウ・ボゥが最終的にアムロとの関係に見切りをつけたことは、彼女が自信を持った強い女性に成長したことの証明であるように思う。

 

 遠い存在になっていくアムロを引き留めようとし、気持ちを挫かれ、やがて自分の成長とともに区切りをつけていく。フラウ・ボゥの心変わりは、女性としてだけでなく人間としてのアムロへの大失恋に始まり、自立によって成し遂げられたとも受け取れる。

 全人類がニュータイプになれば、このような悲しい失恋や行き違いは減るのだろう。それはそれで、なんだか味気ないし粋じゃない気もするけれども……。

  1. 1
  2. 2
全ての写真を見る