■最高のタッグチーム「ザ・マシンガンズ」が放つ至高のタッグ技「マッスル・ドッキング」
最後に紹介するのは、やはりこの2人しかいないだろう。キン肉マンとテリーマンの名コンビ、ザ・マシンガンズだ。
宇宙超人タッグトーナメントの中盤、サンシャインの攻撃で死亡したキン肉マングレートことキング・カメハメから、その死の間際にマスクを託されたテリーマン。キン肉マングレートの中身がテリーマンになっているのにキン肉マンが気が付いたのは決勝戦のヘル・ミッショネルズ戦のこと。一度は仲たがいした2人が、そこで改めてザ・マシンガンズを結成して最終決戦に挑む流れは何度読んでも胸が熱くなる。
そんな彼らの代名詞が、『キン肉マン』のタッグ技でもっとも有名であろう「マッスル・ドッキング」だ。キン肉マンは相手にキン肉バスターを、テリーマンは別の相手にキン肉ドライバーをそれぞれ仕掛ける。そしてテリーマンがキン肉マンを肩車する形でドッキングし、そのまま地面に落下させる必殺技。この「マッスル・ドッキング」には、αとβの2種類があるのはご存知だろうか?
「マッスル・ドッキングα(アルファ)」は、先ほどの説明とは逆に、キン肉マンがキン肉ドライバーを、キン肉マングレートがキン肉バスターを担当する形。この場合、キン肉マンにかかる負担は少ないが威力はわずかに劣る。だが、キン肉バスターは元はカメハメの技で、キン肉ドライバーはキン肉マンのオリジナル技なので、使い手の練度を考えるとこれが最も自然なのだ。
そして、「マッスル・ドッキングβ(ベータ)」は、最初に説明したキン肉マンがキン肉バスターを仕掛ける形。αとの違いは、キン肉マンの落下パワーを存分に活かせる点と、頭脳明晰なテリーマンの正確なドッキングの指示がある点。これにより、技の完成度・破壊力共にαを上回るものになっている。
「マッスル・ドッキングβ」はテリーマンに大きな負担がかかるが、これについて単行本第39巻で「テリーマンは陰で特別な修行をしているので大丈夫」と作者が種明かしをしている。もともと彼はボロボロになりながらも勝利を勝ち取るタフなファイターだが、その彼でさえ過酷な修業を積まなければならないというのだから、その難易度の高さも推し量れるというものだ。
キン肉バスターとキン肉ドライバー、2つの必殺技を違和感なく完璧に合わせた「マッスル・ドッキング」は、『キン肉マン』史上でもまさに至高のツープラトンと言えるだろう。
長年の『キン肉マン』ファンである筆者だが、実は恥ずかしながら『図鑑 キン肉マン「技」』を読んで初めて、「マッスル・ドッキング」にαとβがあることに気づいた。「言われてみれば上下が逆だ!」と新たな発見に驚かされつつ、多種多様な技のダイナミックさや緻密な設定にあらためて感嘆してしまった。思い入れのある技には、必ずと言っていいほどその技が使われた名シーンの記憶がひも付けられている。図鑑で技を振り返る中で、かつて少年時代に『週刊少年ジャンプ』のページをめくりながら手に汗を握ったあの感動と興奮が、心の深いところから呼び覚まされてくる感覚があった。『キン肉マン』の思い出を振り返りつつ、ぜひ読んでみてほしい1冊だ。