■地獄の断罪に晒されたヒーロー

 最後のキャラは、2014年より『週刊少年ジャンプ』で連載中の堀越耕平氏による『僕のヒーローアカデミア』から、フレイムヒーロー「エンデヴァー」こと轟炎司を取り上げたい。

 オールマイトに強い対抗心を抱く彼は「個性婚」で4人の子どもを授かり、その最高傑作が自身の「炎」と妻・冷の「氷」両方を受け継いだ焦凍だった。炎司は幼い焦凍に過酷な特訓を続け、そんな夫に追い詰められた冷は精神を病んでしまう。

 その後、オールマイト引退で強い虚無感を覚える炎司だが、福岡でハイエンドと命がけの戦いを繰り広げたことで人々の心にその雄姿を焼き付け、自身も少しづつ変わっていく。

 だが、彼が家族に与えた大きなツケは、2度の「地獄の轟くん家」で返されてしまう。1度目は研修で受け入れた緑谷たちを家に招いた際、次男・夏雄に家族の確執を責められる。

 次に迎えた「地獄の轟くん家2」が強烈だ。荼毘の正体が死んだはずの長男・燈矢であると知った炎司は、あまりの衝撃に戦意を失ってしまうのだ。世間から非難を受け、重傷で担ぎ込まれた病院のベッドで「大量殺人者(むすこ)と戦えない」と涙を流すなど、心身ともにボロボロとなってしまう。

 初登場時と時と比べると、文字通り見る影もないほど焦燥しきってしまうのだ。

 ちなみに、「ここ最近で描いていて一番楽しかった場面は?」の問いに、堀越氏は荼毘の告発後に「めっちゃ老け顔になってた時」のエンデヴァーをあげており、一部ファンから「やはり……」との声が囁かれた。

 今回は「作者の寵愛を受け過ぎた?」キャラを紹介した。彼ら3人の共通点は、窮地に追い込まれながらも必死に這い上がろうと足掻き、読者にその醜態を晒しながら共感や感動を与えることで、作品に強烈なスパイスを加えたところだろう。

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