TRPGの手触りをテレビゲームに再現した最高の一本! ファミコン末期の名作ソフト『ダークロード』を知ってほしいの画像
ファミコン『ダークロード』(筆者撮影)
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 ファミコンからスーパーファミコンメガドライブからセガサターンなど、新しいゲームハードへと時代が移行するときは、新しいまだ見ぬすごいゲームが遊べるのだと期待に胸が膨らんだものでした。その一方で、古いハードへの関心は薄れてしまい、最終期にはどんなゲームが出たか覚えてない、そもそも知らないなんてこともしばしば。そんなタイミングで発売されたゲームの中には、そのハードの成熟期ならではのすごい技術が詰まっていたり、キラ星のような面白さが詰まったゲームも少なくありません。

 そんなゲームのひとつとして紹介したいのが、今からちょうど32年前となる1991年2月8日にデータイーストから発売されたファミコン用ソフト『Dark Lord』です。

『Dark Lord』より

■邪神復活の兆しがある世界で冒険者として立ち上がる

『Dark Lord』は、光の神アルファーズによって邪神ラグメイラが封印された世界アルフ・ランドを舞台にしたRPG。冒険者となったプレイヤーがクエストをこなしていくにつれ、邪神復活を目論む勢力との争いに巻き込まれていくという比較的オーソドックスなストーリーです。

『Dark Lord』より

 しかし、本作は勇者的な主人公の冒険譚ではなく、プレイヤーはあくまで冒険者のひとりとしてキャラメイクするタイプ。『ウィザードリィ』(サーテック)をイメージしてもらうと分かりやすいと思います。キャラクターは近接戦が得意なファイターか魔法を使うウィザードの2種類で、6人まで作成可能。その際にステータスにポイントを割り振るのですが、その能力の項目や高すぎない数値はインフレ気味のRPGと違い、テーブルトークRPG(TRPG)ファンなら「おっ?」となる数値で、いかにも普通の冒険者といった風情が漂っています。

『Dark Lord』より

■自由度の高い育成とクエストの手探り感が最高に面白い

 冒険者としてアルフ・ランドにある町、イースタールに降り立ったキャラクターは、町では農夫や学者、ナイトといった職業に就くこととなります。冒険者と仕事は別なんですね。町では時間を進めることができ、就いた職業にあわせてパラメータが変化し、職業固有のスキルが取得できる『ソーサリアン』(日本ファルコム)に近いシステムです。

 ということは、時間を進めれば最強キャラができるのでは? と思ってしまいますが、覚えられるスキルは一人4つまで。しかもキャラの年齢も上がってしまいます(年齢が上がるとパラメータが上がりづらくなる)。職業によっては特定のステータスが条件になっているものもあるので、職を変えてパラメータを調節したり獲得できるスキルを選んだりしたりと、かなり幅の広いキャラクター育成が可能なのも本作の魅力です。

『Dark Lord』より

 町はパーティを組み替えたり、武具を買ったりと普通のRPG的な要素もありますが、町の人と会話をすることでクエストが発生します。本作のクエストは、バトル一辺倒ではなく、2Dフィールド上での謎解きが重視されたもの。バトルもシンボルエンカウントなので、うまくやればバトルを回避しつつクエストを進めることも可能なのです。さらに選択肢でクエストの結末が変化するというギミックはもちろん、そもそもクエストを受けないという選択肢もあり、何回でもゲームが楽しめるのです。

 私はこういった幾つものクリア方法があるRPGも好きで、似たようなプレイフィールが楽しめるプレイステーションの『ジル・オール』(コーエーテクモゲームス)も大好きだったりします。

『Dark Lord』より

■TRPGらしい不自由さと手触りが楽しい傑作

 クエストで行われるバトルは、ファミコンには珍しい『ウルティマ(オリジン社)』シリーズに似たタクティカルタイプ。戦略性のあるバトルが楽しめるのはもちろんですが、個人的にツボにはまったのが“フィールドマップがそのままバトルフィールドになる”ことと、“味方を攻撃できる”ことでした。

 シンボルエンカウントによるバトルなので、接触する場所によっては障害物が多く戦いづらかったり、橋や通路など狭い場所では行動が制限されてしまいます。そして、近接攻撃や魔法でのフレンドリーファイアーは、デメリットしかありません。しかし、TRPGやパソコンのRPGに慣れていた筆者としては、そのリアルさ、悪く言えば不自由なシステムをよくファミコンのRPGに採用決定したもんだな!? と称賛に近い感動を覚え、一気にこのゲームに引き込まれていったことを覚えています。

『Dark Lord』より

 こうしてクエストを受けていくことで全体のシナリオが進み、受けたクエストやそのクエストの結末によってエンディングが変化。全体的なボリュームはそれほど多くなく、プレイも結構サクサク進むので、単にエンディングをみたいだけならあまり時間はかかりません。しかし、グッドエンドを見たい、そしてそれをクリアできるようなキャラを育成したいとなると、ちょっと試行錯誤が必要になります。そういった試行錯誤が楽しめるRPG、レトロなパソコンRPGのようなテイストのRPGを遊びたいというのなら、『Dark Lord』は最高にオススメできるRPGだと断言できます。

 しかし、発売が1991年2月8日とファミコン末期で、さらに見た目も非常に地味なせいかあまり本数も出なかったようで、現在はレアソフトとしてちょっとお値段が張ってしまっているのが残念なところ。ですが、プロジェクトEGGさんからかなりのお値ごろ価格で配信されているので、興味を持たれた方はぜひプレイしてみてほしいですね。

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