■世界を揺るがす“破壊神”!!『ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章』異魔神
1991年から『月刊少年ガンガン』(エニックス、現・スクウェア・エニックス)にて連載された、原作・設定:川又千秋氏、脚本:小柳順治氏、画:藤原カムイ氏による『ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章』は、国民的人気RPGの世界観を踏襲しつつ、友情と努力によって“勇者”として成長していく主人公・アルスの奮闘を描いた物語だ。
ゲームにも登場した魔王・ゾーマが倒されたあとの世界が舞台になっているのだが、世界の新たな脅威となっているのが、作中を通じて主人公らが対峙していく“破壊神”こと異魔神だ。
異魔神はかつて封印された太古の魔神で、物語序盤は精神のみの存在として魔王軍を操り、世界を混沌に陥れようと画策する。
彼が本格的に戦闘を行ったのは第二形態からで、凄まじい巨体で体中に角や棘を持ち、焦点の合わない目玉と黒く長い体毛という姿が、どこか“怪獣”を連想させる。そして、無数の隕石を降らせる“りゅうせい”や、月を生み出し再生能力を高める“げっこう”など、呪文を超えた“高密度魔法言語”を使いこなし、世界を破壊し始めた。
アルスやその仲間たちの手によって一時は退けられるが、異魔神は最終形態になり、世界の命運をかけた最終決戦が始まってしまう。
その見た目は第二形態の巨体から一変、少し背の高い人間の姿をしており、角や翼はあるものの、整った顔立ちをしている。サイズこそ小さくはなったが、それでも桁違いの戦闘能力は健在。高密度魔法言語はもちろん、どんな重傷を負っても瞬時に修復してしまう自然治癒力で、駆けつけた仲間たちを次々に倒していく。
世界中の仲間が集結するシーンはなんとも胸が熱くなるが、一方でそれを瞬く間に殺してしまう異魔神の姿は、読者に強烈な絶望感を与えてくれる。まさに太古の“破壊神”の名に恥じない荒ぶる力を発揮した、ラスボスにふさわしいキャラクターだ。
キャラクターが形態変化すると、その姿からどんな能力を持っているのか、どれほどの実力があるのかということを思わず想像してしまうものだ。そんななか、あえてシンプルなフォルムに変化した姿は、一手先を予測させない意外性とミステリアスな魅力を秘めており、より強く読者の心を惹きつけるのだろう。