戦うたびに姿形を変えて新たな能力や隠された実力を解放するのは、バトル漫画における“ボスキャラ”のお約束ともいえる。相手を威圧するように凶暴で刺々しいディティールに変貌する者もいれば、なかにはあまりにもシンプルかつ、すっきりとした見た目の最終形態を持つ者も……。
無駄を削ぎ落した姿に、逆に不気味さすら感じてしまうボスキャラをいくつか紹介していこう。
■今なお進化を続ける“宇宙の帝王”!!『ドラゴンボール』フリーザ
1984年に『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載を開始し、今なおアニメ化や映画化が続いている鳥山明氏の『ドラゴンボール』。作中で多くの形態変化を見せたのは、主人公・孫悟空の宿敵の一人であるフリーザだ。
フリーザは軍隊を率いて数々の惑星を攻撃し、破壊や占領を繰り返している宇宙の“地上げ屋”とも呼べる存在で、丁寧な言葉遣いとは裏腹に利己のためなら家族や部下の犠牲もいとわない冷酷無比な人物である。
初登場時は背の低い宇宙人のような姿をしているが、このときですら戦闘力は“53万”と、当時の孫悟空やベジータを遥かに凌駕する圧倒的力量を兼ね備えていた。だが彼の真価は、変身するたびに進化を遂げ、パワーアップする“変身型種族”という点にある。
悟空たちを相手取るなかで、彼は筋骨隆々とした第二形態、巨大なエイリアンのような頭部をもつ第三形態と、次々に進化を遂げた。
そんな彼の“最終形態”だが、肉体から角や突起が消えた丸いシルエットとなり、紫と白のみで形成された実にシンプルな姿となる。フリーザというキャラクターを、この姿で覚えている方も多いのではないだろうか。
一見するとほかの形態に比べて華奢に思えるが、その戦闘能力は圧倒的の一言。当時の孫悟空とも互角以上の戦いを繰り広げ、結果的にデンデ、ベジータ、クリリンといった多くの登場人物を殺害した……。
当時のバトル漫画において、無駄を削ぎ落した最終形態というのはなかなか斬新だったのだが、実はこれ、作者の鳥山氏が“作画が面倒だから”という理由で考案した、という噂があったりもする……。真偽はどうであれ、先鋭的な最終形態のデザインであることに間違いない。
■大阪に降り立った“死神”『GANTZ』ぬらりひょん
2000年に『週刊ヤングジャンプ』(集英社)で連載を開始した奥浩哉氏による『GANTZ』。命を失ってしまった人々が召喚され、謎の存在である“星人”との生き残りをかけた戦いを繰り広げていく、SFバトル漫画だ。
作中では個性的かつ圧倒的な力を持つ“星人”が登場するのだが、なかでも屈指の強敵として立ちはだかったのが、“大阪編”に登場したボスキャラ・ぬらりひょんだ。
“大阪編”では妖怪の姿を模した数々の敵が押し寄せてくるが、その親玉として君臨するぬらりひょんは、初登場時は頭の大きな老人の格好をしていた。一見、たいした戦闘能力はないように見えるが、損傷するたびに彼はいくつもの形態に変化していく。
人間の姿をはじめ、複数に分身、人の集合体、牛骨をかぶった巨体、魚のような胴体を持った異形……など、なんと漫画版では10もの形態を披露した。
その最終形態は、髑髏の頭部を持つ筋肉の剥き出しの姿をしており、背からは無数の棘が生えている。ほかの形態に比べるといささかシンプルな姿に見えるのだが、その実力はまさに“絶望的”。作中、最強格の一人であった岡八郎を殺害し、その頭部を持って現れ、人間たちを戦慄させる。
どれだけ攻撃を加えようとも倒れることなく、次々と新たな姿に進化するその様は終わりが見えない戦いを予感させ、読者にも大きな絶望感を抱かせた。
静かにたたずむ最終形態の姿は、人間たちの生きようとする力を否定する“死神”のようにも見え、どこか生物としての“格”の違いを見せつけられた気がした。作中に登場するほかの“星人”と比べても、より鮮烈に“死”を予感させる、なんとも圧倒的なディティールのキャラクターだ。