■『かぐや姫の物語』の御門はなぜアゴが特徴的なのか?
高畑勲監督が手がけた『かぐや姫の物語』からは、ファンの間でも物議を醸した「御門のアゴ」について紹介しよう。
御門とは“帝”のことで、この時代においては最高権力をもつ存在だった。それゆえに、少々横暴な様子が描かれ、かぐや姫に強引に迫るシーンでは彼に対し辛辣な意見が飛び交っている。
御門がそれほどまでに責め立てられるのには、彼の容姿にも要因があると言われている。御門は目鼻立ちが美しい美男子なのだが、アゴだけ妙に長く、しゃくれているようにも見えるのだ。
問題のシーンでは「御門がイケメンだったら……」と、彼の容姿に嫌悪感を抱いてしまった人もいたというほど特徴的な御門の“アゴ”。
これについては、実は高畑監督の提案が大きく関係していたようだ。2018年5月18日に投稿された「金曜ロードショー」公式ツイッターによると、“キャラクターデザインを見た高畑監督が、「美男だけど一ヶ所バランスを崩してみてはどうか。たとえばアゴとか」と言ったため、御門のアゴが伸びました”と、衝撃の事実を明かしている。
本来は、“最もきれいな顔”で描かれるはずであった御門……。かぐや姫とのシーンに説得力を持たせるためのあえての演出だったことも明かされているが、結果的にファンからは大きな反響があり、御門のインパクトは絶大だっただろう。
日本を代表する名作が多いスタジオジブリ作品。ファンも多いことから、作中で描かれた“不思議な描写”に関してはたびたび議論が飛び交っている。これほどまでに関心が集まるのは、やはり“作品の力”によるものだろうが、なかには噂が一人歩きしてしまった……ということもあるようだ。
上記に挙げたのは、監督やスタッフたちが意図して描いた“不思議な描写”だった。その謎を紐解くと、制作者の隠された意図を汲み取ることができ、あらためて作品の素晴らしさを知ることができたと思う。