ゼボットとエリー、キナイとロミア『ドラゴンクエスト』で描かれた悲しすぎる2つの恋物語の画像
プレイステーション『ドラゴンクエストVII』(編集部撮影)
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 1986年にファミリーコンピュータ用ソフトとして誕生したゲーム『ドラゴンクエスト』。壮大なストーリーに、スキルパネルや転職でのキャラ育成などなど同シリーズの魅力はさまざまだが、やはりなんと言っても欠かせないのが冒険の最中に出会う人間味あふれるキャラクターたち。メインの冒険には関わりのない人物であっても、細かく作られた彼らのセリフによって、プレイヤーに『ドラクエ』の世界がどのようなものなのかをより深く分からせてくれる。

 そこで今回は、『ドラクエ』ナンバリングタイトルにおいて、プレイしていて胸が苦しくなるような2つの悲しい恋物語について振り返りたい。

■永遠に死なない存在を追い求めた愛情の果て「ゼボットとエリー」

 まずは『ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち』から、フォロッド編に登場するゼボットとエリー。過去のフォロッド城で、エリーという王女が不慮の事故で亡くなったことを知ることができる。そして、エリーの婚約者だったゼボットは、死が必ずやってくる人間に絶望し、「永遠に死なない存在」を求めてからくり研究所で1人、ロボットをつくる研究に明け暮れたのだった。

 長年の研究と失敗の末に、ついにゼボットはからくり兵をもとに、花を愛でることができるなど学習能力の高いロボットをつくることに成功。最愛の人であったエリーと名づけ、2人はともに暮らす。

 だが現代のフォロッドを訪れると、言葉を失ってしまう悲しい光景を見ることになる。ゼボットの家のベッドには、白骨化したゼボット、そしてその側には、何も反応することがないゼボットの遺体を懸命に介護しているエリーの姿が……。エリーは、スープを飲めばゼボットが元気になると信じてスープを作り続けていた。ゼボットが彼女に死の概念を教えなかったため、彼女にはなぜゼボットが喋らないのかが分からないのだ。

 その後、からくり兵の研究を進めるために連れていかれたフォロッド城で、エリーは破壊されてしまう。それでも、修理されたエリーはゼボットのことを覚えていたため、フォロッド王から「エリーはもう、からくりなどとは呼べぬ存在なのだろう」と理解を得ることができ、再度ゼボットの家へと戻されたのだった。

 また、スープを作り出したエリーは、主人公たちに「ア…リ…ガト……ウ。えりー ウレ…シイ……。」と、まるで人間のように最後にお礼を伝えたのだった。

 さらにストーリーが進んだのちに再度フォロッドを訪れると、ゼボットの亡骸の傍らで、静かにエリーは機能停止している。ロボットとして生を受けたエリーが、ゼボットに寄り添って終わった2人の恋物語。感情や愛情をもっているように思えてならない献身的なエリーの姿は、多くのプレイヤーの胸を打ったのではないだろうか。

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