■『チェンソーマン』の『潰談』『ギョ』へのリスペクト

 最後は、2022年10月期にアニメ化された藤本タツキ氏による『チェンソーマン』。コミックス4巻、アニメ9話で描かれたマキマの能力がかいま見える衝撃的なシーンは伊藤氏の『潰談』をイメージしている。

『潰談』はある「蜜」の持つ魔力と、その蜜をなめたことが見つかってしまったら何者かによってペシャンコに潰され死んでしまうという恐怖を描いた物語。

『チェンソーマン』では、マキマの能力によって人柱の死刑囚が人間の名前を口にすると、該当者が突然ペシャンコに潰れるという粛清シーンが描かれた。「見つかると潰されて殺される」という点まで酷似している。

 これについては藤本氏本人が『ジャンプ』の巻末コメントで、「伊藤潤二先生の潰談とナ・ホンジン監督のコクソンを見て描きました!」と語っており、『潰談』と映画『哭声(コクソン)』に影響を受けたことを匂わせている。このほか、2巻に登場する魚の悪魔の魚から足が生えているデザインが伊藤氏の『ギョ』を元ネタにしていることもツイッターで明かしており、たびたび伊藤潤二氏へのリスペクトを公言している。

 人気漫画家が大きな影響を受けている伊藤潤二氏のホラー漫画の魅力の数々。人の心をひきつけてやまない作品の数々に触れることで、クリエイティブな感性が刺激されるかも。

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