影響力がすごい!『HUNTER×HUNTER』に『チェンソーマン』…伊藤潤二のホラー漫画をオマージュしたジャンプ名作3選の画像
『伊藤潤二 マニアック』(C)ジェイアイ/朝日新聞出版・伊藤潤二『マニアック』製作委員会
全ての写真を見る

 2023年1月19日より、Netflixオリジナルアニメ『伊藤潤二 「マニアック」』が独占配信中だ。

 1986年に行われた「第1回楳図かずお賞」に投稿した漫画『富江』にて漫画家デビューし、長きにわたり日本のホラー漫画界を牽引してきた鬼才・伊藤潤二氏。彼の作品は、独創的な世界観に加え、耽美なタッチやクセになるシュールさ、不気味さの中にときおり笑いもあり、怖いのについ何度も見たくなってしまう魅力がある。

 同業である音楽のプロたちが、好んでファンを公言するミュージシャンを「ミュージシャンズミュージシャン」と呼ぶことがあるが、伊藤氏こそまさしく「漫画家ズ漫画家」ではないだろうか。これまでにも多数が映像化されてきた伊藤氏の作品について、『週刊少年ジャンプ』作家たちの中にも、彼の作品に影響を受けたことを公言している人は多い。今回は、伊藤潤二氏のホラー漫画をオマージュしたジャンプ作家たちを紹介したい。

 まずは、冨樫義博氏による『HUNTER×HUNTER』。4巻では伊藤氏の『ファッションモデル』のキャラクターをオマージュしたシーンが出てくる。

 それは、ハンター試験4次試験のときのこと。ヒソカが見つけた獲物に対し、ものすごい形相で襲いかかったときの怖すぎる顔が、まさしく『ファッションモデル』に登場する淵そのものだった。

 このシーンでは、ヒソカに狙われたアゴンも「淵!? い、いやヒ…ヒソカ!!」と元キャラクターの名前を出している。

『ファッションモデル』は、喫茶店で岩崎が手にした雑誌に載っていた身長2メートルはあるかという不気味なモデル・淵がメインの話で、ある日岩崎が脚本を務める映画サークルが公募したヒロイン役に淵が応募をしてきたことで惨劇が繰り広げられるという話。

 やつれた顔面に見開いた目の淵の顔面のインパクトがとにかく強く、彼女の顔は一度見たら誰もが忘れられないだろう。アゴンでなくても、あんな形相の人に追いかけられたらトラウマになりそうだ。

 続いては芥見下々氏による『呪術廻戦』。「最悪の呪詛師」と称される特級呪詛師・夏油傑の術式「うずまき」は、伊藤氏の『うずまき』に登場するトラウマシーンと酷似している。

 夏油の「うずまき」は呪霊操術の奥義で、自身の所有する呪霊をひとつにまとめ、超高密度の呪力にして放つ技。彼が技を放つ際に背後に描かれたのが、うずまき状になった人間のグロテスクな姿だった。

 一方元ネタである伊藤氏の『うずまき』は、女子高生の五島桐絵とその恋人である斎藤秀一の周りで起こる「うずまき」にまつわる怪奇現象の物語で、人がねじれたり人間がカタツムリになったりと、町中がうずまきに支配されていくというストーリーだ。『呪術廻戦』で描かれた人間のうずまきは、物語の序盤でうずまきに魅入られた秀一の父親が樽の中で死亡している姿を描いたものである。

 このオマージュについて、芥見氏は単行本16巻にて「パロディやオマージュの線引きは、自分の中では明確な基準がありますが、それらは色々な人(今回の場合、伊藤先生)の優しさに甘える前提であることは否めません」とコメントしている。なお、芥見氏は伊藤潤二作品では『長い夢』がお気に入りのようだ。

  1. 1
  2. 2