2016年に『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載された『鬼滅の刃』。吾峠呼世晴氏による本作は、日本中で“鬼滅ブーム”を巻き起こし、社会現象となった人気作品だ。
本作の主人公・竈門炭治郎は6人兄弟の長男で体が弱かった父親に代わって一家を守り支えていた。そんな彼の有名なセリフに「俺は長男だから我慢できたけど 次男だったら我慢できなかった」というものがある。
これは彼が大怪我の痛みを堪え、鬼と戦うことを決めたときに放ったセリフだが、長男として背負った責任の重さや苦労が読み取れるだろう。
そこで今回は、彼のように“長男”として男気を見せたキャラを、ジャンプ作品のなかからご紹介しよう。
■弟思いだが不器用な長男『鬼滅の刃』不死川実弥
まずは同じく『鬼滅の刃』から不死川実弥を紹介したい。実弥は7人兄弟の長男で、歳が近い弟・玄弥は炭治郎と同時期に鬼殺隊に入隊している。しかし、弟であるはずの玄弥に対し、実弥は常に冷たく突き放すような態度をとっていた。これには彼らの過去が深く関わっている。
暴力的な父親から身を守る日々だったが、その父親は他人から恨みを買って殺されており、以後は長男である実弥が母親を含め家族を守っていた。
しかしある日、帰りが遅い母親を探しに実弥が家をあけている間に、幼い兄弟たちは正体不明の獣に殺されてしまう。帰宅した実弥は彼らを守ろうと武器を手に取り獣へ立ち向かっていき、ようやく獣を始末したところで、夜が明け日がのぼる。すると獣の正体が鬼化した母親・志津であったことに気づいてしまうのだ……。
血に塗れて武器を手にする兄と、すでに亡くなっている母親の姿を見てしまった玄弥は、思わず彼に「人殺し」とひどい言葉を投げかけてしまう……。兄弟たちを守ろうとしたのだが、結果的に母親を殺してしまった実弥。そのあと彼は、玄弥を守るため鬼殺隊として鬼と戦うようになる。
彼は誰よりも弟・玄弥の幸せを願っており、亡くなってしまった家族のぶんまで幸せになってほしいと望むがゆえ、玄弥を突き放すような態度をとっていたようだ。
家族を守るために命がけで戦い、傷だらけになってしまった実弥を思うと、彼の男気にホロリとしてしまうのは筆者だけではないはずだ。
■守った結果、弟に恨まれてしまった『NARUTO-ナルト-』うちはイタチ
岸本斉史氏による『NARUTOーナルトー』からは、メインキャラであるサスケの兄・うちはイタチを紹介しよう。イタチは過去にうちは一族を滅亡させ、里を抜けた“抜け忍”として登場する。サスケにとっては自分の家族を殺した犯人で、彼は“イタチへ復讐すること”を自らの使命としていた。
しかし、これはすべてイタチによって仕組まれたシナリオだった。彼は木ノ葉隠れの里に対してクーデターを企んでいたうちは一族を内部から止めようとしていた。だが、彼の願いも虚しく、一族は計画を止めず里によって粛清されることになる。
うちは一族と里の二重スパイとして双方を守ろうとしていたイタチは、里の上層部に“一族が全滅するかサスケだけでも生かすか”という究極の選択を迫られる。
結果的にイタチはサスケを守るために一族を滅亡させ、抜け忍となった以後も外部からサスケを守り続けていた。誰よりも弟を大切に思い、弟の命を守ることに尽力したイタチ。
彼こそ、長男、そして兄として鑑のような人間だと思う。自分の身を投げうち、弟に恨まれながらも真実を隠し続けていた彼の男気には、胸が締め付けられる思いだ……。