円満家庭はもはや希少? 最近の『ジャンプ』漫画の家庭環境が複雑すぎる…!『一ノ瀬家の大罪』は家庭崩壊…?の画像
『チェンソーマン』(C) 藤本タツキ/集英社・MAPPA

『タコピーの原罪』で話題となったタイザン5氏の最新作『一ノ瀬家の大罪』が『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載中だ。同作は、一家六人全員が事故で記憶を失ってしまった一ノ瀬家の面々が記憶喪失前の生活を思い出していこうとする、訳アリ一家のホームドラマ。

 第1話では、一ノ瀬家は全員記憶がないながらも家族らしく楽しく過ごしていこうとするが、退院し家に帰ると家中が見るも無残に散らかっており、主人公の翼の部屋の壁には一面「死」の文字。明らかに仲のいい家族だったとは思えない光景が広がっていた。物語として最悪の幕開けで、毎週読者がハラハラしながら一ノ瀬家を見守る中、1月30日発売の『週刊少年ジャンプ』ではさらなる衝撃的な展開を迎え、SNSでは早朝から関連ワードがトレンド入りを果たした。

 最近の『ジャンプ』連載漫画は同作以外にも、家庭環境が複雑すぎる作品が多いように感じる。もちろん昔から主人公が生まれてすぐに母親が亡くなっていたり、父親が行方不明など、何かしら家庭に障害を抱えている展開は王道ではあるのだが、最近ではそれよりもっと悲惨な環境を持つものが多い。

 今回は最近の『ジャンプ』漫画の複雑すぎる家庭環境に迫りたい。

 まずは、2022年10月度にアニメ化されさらに人気となった藤本タツキ氏による『チェンソーマン』。2019年から2021年にかけて第1部が『週刊少年ジャンプ』で連載され、2022年7月からは「少年ジャンプ+」で第2部がスタートした同作。第1部では、主人公のデンジの父親は幼い頃に亡くなり、デンジは父の借金を危険な非正規のデビルハンターとして働くことで返済していた。

 父の膨大な借金とその利子のせいで、危険な仕事をしても手元に残るのは1800円。1日の食事は食パン一枚、臓器も売れるだけすでに売っているという、生きるというにはあまりにギリギリな環境でかろうじて生命をつないできたデンジ。彼はこの後ゾンビの悪魔に殺され、チェンソーの悪魔であるポチタと一体になることでチェンソーマンになり、公安でデビルハンターとして働きながら少しずつ人間らしい生活を手にしていく。

 デンジはその生い立ちがあまりに悲惨ゆえに、早川アキやパワーとともに賑やかで楽しそうな日常を送っている様子につい心が和んでしまう。

 松井優征氏による『逃げ上手の若君』もそうだろう。2021年から連載されている同作は、鎌倉時代から南北朝時代の北条時行の生涯を史実をもとに描いた歴史漫画だ。戦って死ぬことこそが武士の本懐とされた時代の中、物語の第一話は足利尊氏の裏切りで鎌倉幕府が滅ぼされたところからスタートする。

 時行の父や異母兄ら北条家の面々はそれまでぬくぬくと暮らしていたが、この謀反によって自刃や斬首に追い込まれ、ただ、普段から武芸の稽古から逃げるのに長けていた時行だけが生き残ることとなる。

 突然全てを失ったたった8歳の彼は以後、諏訪頼重に保護され「逃げる」ことで自らの過酷な運命を切り開いていく。

『魔人探偵脳噛ネウロ』や『暗殺教室』を手がけた松井氏の最新作が歴史漫画とは少々意外であった。それも、これまでの歴史ものではフィーチャーされることの少なかった北条時行を主人公に据えたことは大きな話題となった。

 いくら歴史漫画といえど、たった8歳の主人公が親族やそれまでの暮らし全てを失ってしまう絶望感は想像に難くない。この衝撃的な第1話によって、彼もまた、家庭環境が複雑になってしまった主人公のひとりだといえるだろう。

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