プレイヤーをRPGの世界に一気に引き込むオープニングの演出。映像やBGMの美しさはもとより、これからどのような物語が描かれるのか、期待を最高潮に高めてくれる「プロローグ」は、何よりも重要な要素のひとつだ。
いきなりボス戦から幕を開け自陣が全滅する『メタルマックス2』だったり、超常現象に巻き込まれて冒険することになる『MOTHER』だったり、ほとんど何も語られないままダンジョンに突入する『ファイナルファンタジー3』だったり、ファミコンやスーパーファミコン時代のRPGにも、それぞれ忘れられない物語の「オープニング」があるのではないか。
そこで今回は、筆者がとりわけ印象深かった「テンションが最高に上がったRPGのオープニング」を振り返りたいと思う。
■なまえを入力しても主人公は出てこない?『ドラゴンクエストIV』
まず1本目に紹介したいのが、1990年に発売されたファミコン版『ドラゴンクエストIV 導かれし者たち』(以下DQ4)だ。
RPGのお決まりといえば、スタートする際にプレイヤーキャラの分身である主人公の「なまえ」を入力するが、同作では入力後にいきなり、第1章「王宮の戦士たち」がスタート。パッケージに描かれている勇者ではなく、バトランド国の戦士・ライアンを操作することになる。本来であれば主人公キャラを操作することになると思いがちなだけに、当時のプレイヤーは相当驚いたのではないだろか。
バトランド付近では、子どもを狙った誘拐事件が頻発しており、戦士ライアンはそれを解決せよと指令を出される。そして塔に待ち構えるボス「ピサロのてさき」を倒すことになるが、どうやらこの誘拐事件に「勇者」が関わっていることを知る。そして事件を解決して国に戻ったライアンが、褒美もそこそこにまだ見ぬ「勇者」を探す旅に出るという、1章が丸々プロローグに使われているという演出だった。
なおリメイクであるプレイステーション版以降は正式なプロローグである「序章」が追加されており、最初に主人公を操作するシーンが追加されている。これによりいきなりライアンが出てくるという違和感は減少したが、ファミコン版の1章の見せ方が好きだというファンは多いのではないだろうか。1章から4章のそれぞれの主人公たちが、まさに運命に導かれるように勇者のもとに集まっていくという展開で、いったい5章でどんな物語が待っているのか、期待を最高潮に高めてくれる始まり方だった。
■牧歌的始まりから一転する『クロノ・トリガー』
次に紹介したいのは、1995年にスーパーファミコン(以下SFC)で発売された、DQとFFのスタッフによるドリームプロジェクト『クロノ・トリガー』。
物語のスタートは、主人公「クロノ」が母親から起こされて目が覚めるところから始まる。街では王国の建国1000年を祝う祭が開催されており、ヒロインの「マール」とのんびりデートを楽しむ非常にゆったりとした雰囲気だ。
だが幼なじみの「ルッカ」が作った転送装置を見学していると、装置のトラブルによりマールが忽然と姿を消してしまう。そしてクロノもマールが残したペンダントを持って後を追い、未知なる空間に飛び込んでいく。と、このようなプロローグだ。
王様から「世界を救え」と言われるような王道のRPG展開ではなく、まるで映画の幕開けのような同作のプロローグ。その後の本編自体もテンポよく進み、新たな時代や世界を旅するごとにワクワク感とテンションを高めてくれるゲームデザインは、本作が名作と言われる要素の一因とも言えるだろう。
1月26日に、『オクトパストラベラー』や『ブレイブリーデフォルト』を手がけるスクウェア・エニックスの第二開発事業本部ディビジョン6、通称「浅野チーム」が、サイト上でアンケートを行い、その中に「リメイク・リマスターを希望化するタイトルがあれば教えてください」という項目があったことがファンの間で話題となった。現在もまだ回答を募集中だが、やはり人気作である『クロノトリガー』のリメイクを期待する声が目立っている。
もしリメイクが実現するとして、このJRPG史に残る最高のオープニングがどう描かれるかも、楽しみにしたいところだ。