■3日で作った伝説残る「そばかす」

 また同じく90年代のアニメで大ヒットを記録した楽曲といえば、JUDY AND MARYの「そばかす」もそうだろう。

 かつて「人斬り抜刀斎」として恐れられた緋村剣心の生きざまを描いた漫画『るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-』。同作は1996年から1998年にかけてアニメ化されており、その初代オープニングテーマに起用されたのが、ジュディマリ9枚目となるシングル「そばかす」だった。

 失恋した女の子のせつない気持ちを歌った曲だが、こちらもアニメの内容が殺伐とした時代物であることから、作品の雰囲気に合っているとは言いがたい。同作は2023年にフジテレビ系“ノイタミナ”で再びアニメ化されることが発表されているが、過去のアニメを見てジュディマリのポップな曲調とるろ剣の組み合わせに驚く若い視聴者も多いのではないだろうか。

 なぜ『るろ剣』の主題歌が「そばかす」だったのかについてはメンバーそれぞれがインタビューなどで繰り返し語っており「3日で仕上げた」という伝説もあるほど。音楽雑誌『WHAT’s in 』のジュディマリ特集ムックのインタビューによると、3rdアルバムを作り終え、ツアーに向けて準備を進めていたところに突然アニメタイアップの話が舞い込んできたそうで、しかも「2日で曲を書いてくれ」と頼まれたのだとか。

「不良少女」の詩を書きたかったYUKIはアニメソングというヒントから『キャンディ・キャンディ』を連想し、それで生まれたのが「そばかす」の世界観。メンバーは時代劇という詳しいアニメの内容すら知らされていなかったそうだが、多忙だったバンドが無茶なスケジュールの中で“怒り半分”でレコーディングに臨み、見事納期3日で完成させたこの曲が結果的にはミリオンヒットを記録した。

 元々『るろ剣』は涼風真世や藤谷美紀、八嶋智人など俳優や女優が声優として多く採用されたアニメで、大人も楽しめる要素が多い作品。そういった意味では『るろ剣』が「そばかす」の曲の宣伝として大きな効果をもたらしたことは間違いない。

「あなただけ見つめてる」にしても「そばかす」にしても、今となっては「この曲じゃないとアニメにしっくりこない」と思うほどにファンに支持された曲となった。はじめに感じていた違和感も、消しとばしてしまうほどの魅力が2曲にはあったのは言うまでもないだろう。

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