『機動戦士ガンダム』や『宇宙戦艦ヤマト』など、昭和のアニメの主題歌といえば、作品タイトルをサビで高らかに連呼したり、技名や作品のキーワードなどが歌詞にちりばめられることが多かった。それが平成以降は、人気アーティストによる作品とは全く関係ないJ-POPが主題歌として採用されることが主流となる。
大抵はそれでもどことなくアニメの雰囲気にあった曲が使用されたり、作品名こそ歌詞にないものの、作品をイメージした曲が新たに作られるものである。2022年10月から放送された人気アニメ『チェンソーマン』の主題歌である、米津玄師による「KICK BACK」はその最たる例だ。イントロから派手なチェーンソーの音が響き、歌詞の内容も主人公のデンジの心境を見事に表している。
しかし中には「なぜその曲が採用された?」とつい首を傾げてしまうほど、本編の雰囲気や内容に即していない曲が採用されることも。今回はそんな平成初期のアニソンの謎に迫りたい。
まずは、1990年から1996年まで『週刊少年ジャンプ』(集英社)にて連載され、空前のバスケブームを巻き起こした井上雄彦氏による『SLAM DUNK』。アニメは1993年から1996年まで放送された。
その初代エンディングテーマは大黒摩季の歌う「あなただけ見つめてる」。恋人の好みに合わせることを最優先にした結果、自分の好きなものやアイデンティティを見失ってゆく女性の姿を描いたラブソングだ。
ご存知の通り『SLAM DUNK』は恋愛とは程遠い青春バスケ漫画。どうしてこの作品に「あなただけ見つめてる」のような楽曲が使用されたのかについて、大黒はかつてのインタビューで、作詞時に原作を読み終えないまま曲を作ってしまったことを明かし、あらためて読み終えた後に「その内容の深さと感動で、痛い女子の根性ラブ話の歌詞にしてしまったことを申し訳なく思った」と後悔している様子をみせた。
なお、本来アニメで放送される箇所の歌詞には、曲中に登場する女の子が「サッカー」が好きになったというフレーズがあるが、さすがにバスケを題材にした同作には似つかわしくないということで、アニメで放送された歌詞は「お料理」をがんばってるという2番の歌詞を混ぜたような内容に変更されている。
作品と曲の内容に違和感はあるものの、同曲がヒットしたのは間違いない事実。「あなただけ見つめてる」は『SLAM DUNK』主題歌の中でも最大のセールスを記録した。