『SLAM DUNK』で「確かに…」と思ってしまった“細かすぎる秀逸ツッコミ”3選 井上雄彦のコミカルな描写がクセになる…!?の画像
『SLAM DUNK』(17) [DVD](東映)

 バスケ漫画としてのみならず、今や日本漫画を代表する『SLAM DUNK』。2022年12月3日に公開された映画『THE FIRST SLAM DUNK』は、既存ファンだけでなく新たなファン層をも獲得している。累計の観客動員数は610万人、興行収入89億円を突破し、その勢いは止まることはない。

 井上雄彦氏の圧倒的な画力はもちろんのこと、試合中や練習中などの描写が細部にわたって丁寧に作り込まれているのも、本作の魅力だと思う。

 今回は、登場人物の“細かすぎる秀逸ツッコミ”に注目して、シーンを振り返ってみたい。

■「ここから1点でも多く入れた方の勝ち」にツッコむ桜木

 インターハイ初戦、強豪・豊玉高校と対戦した湘北。豊玉メンバーに翻弄されて前半は苦戦したものの、後半残り5分で同点に追いつき、スコアを振り出しに戻す。

 そして、豊玉が取ったタイムアウト。金平監督が岸本実理を殴り、荒れる豊玉ベンチを横目に、安西先生は「こっちに注目!」「むこうはむこうだ」と神妙な顔つきで話を始める。

「残りは5分 点差はなし」「ここから1点でも多く入れた方の勝ちです」の言葉に、キャプテン赤木剛憲・三井寿・宮城リョータは「はい!!」と気合十分、真摯に応えるのだが、桜木だけは「まーーた あたりまえのこと 言ってやがる……」と、心のなかでツッコんでいる。

 そして「そのためには1回でも多く攻撃のチャンスをつくること」「相手の攻撃のチャンスを減らすこと」と続けた先生は、「リバウンドを制すれば勝てる!」と言い切った。

 ここでようやくハッとした様子を見せる桜木。もしかしたら安西先生は、あえて最初から簡単な言葉でリバウンドの必要性を桜木にわかるように伝えていたのかもしれない。

 実際、ここから桜木は立て続けにリバウンドをむしり取っていく。思わずツッコみたくなるような当たり前のセリフだったが、この的確な助言がまさに功を奏しており、さすが勝負師の異名を持つ安西先生だと思った次第だ。

■安西先生の写真を飾る三井に猛ツッコミを入れる赤木と桜木

 インターハイ最終予選、陵南との試合前日に安西先生が倒れ入院し、監督不在のまま試合に臨んだ湘北メンバー。

 試合前「どーも 先生が見てないと…」と、どこから持ち出したのか安西先生の写真をいそいそとベンチに飾る三井。それに「やめろ縁起でもねぇ!!」と、すかさずツッコむキャプテン・赤木剛憲と桜木。

 さらにコートに出て行く際にも「先生……オレが こいつらにできる最大の償いは…全国へ連れていくことですよね…」と、センチメンタルな様子で目を閉じ、手を合わせる三井。これにも「手をあわすな!」「生きてる!」と猛ツッコミを入れる2人。

 湘北メンバーはみな安西先生を慕っているが、とくに元中学MVP・三井は、スカウトされた強豪校を蹴ってまでも“安西先生のもとでバスケがしたい”という理由で湘北に入ったという経緯がある。

 バスケから離れてグレた過去もあるが、三井が心底安西先生を慕い、思っているのがよく分かるシーンだ。ちなみに、インターハイ予選の翔陽戦の際、安西先生も「三井君…」「君がいてよかった…」という言葉をかけていたが、互いの師弟愛が強く感じられるシーンはほかにもある。

 それにしても、試合前の緊迫したシーンのなかで織り交ぜられたこれらの描写。緩急が絶妙で、何度でも読み返してしまう。そして、カッコいい三井がなんだか可愛らしく見えるのも、このシーンの好きなところだ。

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