■『ファイナルファンタジーX』よりガガゼト山

『ファイナルファンタジーX』は、2001年にスクウェア(現スクウェア・エニックス)から発売されたRPG。同社の代表的な存在である『ファイナルファンタジー』シリーズにおいて、10作目のナンバリングタイトルにあたる。ある理由から1000年後の世界にやってきた主人公のティーダが、召喚士ユウナの旅のお供をしながら、“シン”という強大な敵を倒すために奮闘する物語が描かれた。

 ガガゼト山は、ほとんどが雪に覆われた山脈で、物語的に重要な意味を持つ。というのも、ここを越えた先にあるザナルカンドという遺跡には、シンを倒すために必要な“究極召喚”がある。ユウナが各地を旅してきたのは、その究極召喚を手に入れるためだった。彼女にとってガガゼト山は、目的を遂げるための最後の難関になるわけだ。

 詳細は控えるが、ガガゼト山に辿り着く前から、ユウナは裏切り者として方々から追われている。汚名を着せられながらも、ひたすらに召喚士の責務をまっとうしようとする彼女の姿勢は、多くのプレイヤーの心を打ったのではないだろうか。山の門番であるロンゾ族も、最初こそユウナを激しく罵っていたが、やがて彼女の覚悟を知ると、頂に通じる道を譲った。

 山道には、道半ばで倒れた者たちの墓があちこちに建っており、ザナルカンドに至ることの険しさを如実に物語っていたのも印象深い。一方、ティーダたちをつけ狙うシーモア老師や、山頂の近くにいる聖地のガーディアンといった強敵とのバトルもあり、プレイヤー側も、ガガゼト山の過酷さを身をもって知ることになった。

■『ゴースト・オブ・ツシマ』より上県地方

 最後は、2020年に発売されたアクションアドベンチャー『ゴースト・オブ・ツシマ』。13世紀後半の日本を舞台に、対馬を占領したモンゴル帝国軍と戦う武士・境井仁の姿が描かれた作品で、オープンワールドを導入しており史実に基づいて再現された対馬を自由に動き回ることができたのも特徴だ。

 本作に登場する対馬は3つの地方に分かれており、南部を厳原(いづはら)、中部を豊玉、北部を上県(かみあがた)という。ストーリーは厳原から始まり、展開が進むにつれて主人公の拠点は北に移っていくので、つまり上県は、『ゴーストオブツシマ』でプレイヤーが最後に訪れる場所でもある。

 緑が茂る厳原、紅葉が見られる豊玉ときて、上県は辺りが雪で覆われている。多くの屋根には分厚い雪が積もっており、一面に広がる雪景色、目の前も霞むような猛吹雪と、厳冬をそのまま表現したようなところだ。一方で、晴れているときに神社へ行くと、真っ赤な鳥居と白い木々の対比が印象的で、スクリーンショットを撮るだけで絵になるような美しさもあった。

 物語の視点から見ると、上県に着いた時点での境井仁の境遇は、当初と比べて大きく変わっている。かつて仁は、武士道を信じて誉れある戦いを志していたが、凶悪で強大な蒙古を前にしてその考えは揺らいでいき、ついには勝つために手段を選ばない“冥人(くろうど)”として生きることを選んでしまう。

 その結果、武士道を教えてくれた伯父との確執は決定的となり、敵を毒殺したことが発覚すると牢屋につながれ、仁義に背いた裏切り者として扱われることに。それでも敵の総大将であるコトゥン・ハーンを討つため、仁は追っ手から逃げるようにして上県にたどり着いた。主人公につぎつぎと降りかかる災難を見て、もう後には退けないと腹を括ったプレイヤーも多かったのではないだろうか。

 今回ピックアップしたのは以上の4作だけだが、物語の転換点に冬を結び付けるという傾向は、あながち間違いではないのではないだろうか。ストーリーの動きや感情の機微を表すものとして、どのような演出が用いられているのか。そうした視点でゲームを遊んでみると、新しい発見があるかもしれない。

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