■子どもが絡むと激甘になることも…「風車」に「ぬいぐるみ」など

 意外と子どもに優しいブラック・ジャックは、報酬も子どもが絡むと激甘になる傾向がある。たとえば、秋田文庫版7巻収録の「タイムアウト」で報酬の代わりとなったのは“風車”だった。

 この話でブラック・ジャックは、タカシという男の子が鉄材の下敷きになってしまう事故に遭遇。事故の原因である建設会社の社長が“費用はいくらでも払う”と言うのを聞き、手術を引き受けることとなったのだが、最終的にその話は反故にされてしまう。

 その後、ブラック・ジャックは助けたタカシの母親に報酬を請求する……のかと思いきや、元気になったタカシからニコニコしながら風車を渡され、「いただいておこう 五千万円のかわりだ」と笑顔を見せるのだ。最後のコマで風車を手に街を行く後ろ姿が、あまりにもカッコよすぎる。

 また、秋田文庫版16巻収録の「にいちゃんをかえせ!!」のエピソードでは、ピノコが好きな特撮ヒーロー番組で悪役“ゴーラス”を演じる青年・タカオの手術をすることになるのだが、このときは番組で使用している“ゴーラスのぬいぐるみ”を報酬として提示していた。

 その際、「私のところのピノコがあの番組の大ファンでね ゴーラスのおじさんなら私がなおすといってるのです」などと言って、ピノコに手術をやらせるふりをしたブラック・ジャック。素直に「ピノコにぬいぐるみをゆずってくれれば手術を引き受ける」と言わないところが彼らしい。

 ちなみにこの回でブラック・ジャックは、タカオの弟・ユキオに“にいちゃんをさらった魔像軍団の大首領”と勘違いされ、恨まれてしまっていた。それを知った彼の“粋なはからい”にも、ぜひ注目してほしいところだ。

 

 金にがめついと陰口をたたかれるわりに、時と場合によってはラーメンや風車程度の報酬で仕事をしてしまうブラック・ジャック。素直じゃないけどほんとうは優しい彼の魅力から、これまでもこれからも目が離せそうにない。

  1. 1
  2. 2