■「あと5秒あるぞ!! もう1本取れぇっ!!!」
インターハイ地区予選で湘北の前に立ちはだかったのが神奈川県の王者・海南大附属。翔陽が勝ちあがってくると予想していた高頭監督は、事前に湘北の情報を何も知らないと選手たちにあっけらかんと言ってのける。この時点で監督としてどうなんだろうと疑問に思った読者もいるかもしれないが、その手腕は確かなもの。宮益をマッチアップさせることで桜木の弱点をすぐに見抜き、安西監督からも「さすが高頭くん」といわれている。
だがそんな優れた判断力がある一方で、高頭監督の場合、相手に追いつかれると途端に不機嫌になってしまう残念なクセをもっている。この試合でも、流川の個人技により点差が縮まるにつれて苛立ちを隠すことができなくなり「あと5秒あるぞ!!もう1本取れぇっ!!!」と特別な作戦を立てるわけでもなく、選手たちを一喝。最終的に、同点に追いつかれるとその苛立ちは頂点に達し、愛用の扇子を真っ二つにへし折ってしまうのだった。
監督も選手も人間であるため、一喝によって選手たちに気合が入る場合もある。湘北戦では高頭監督の喝を受けた清田が、後半、流川を死守することにつながったため、功を奏したといえるのかもしれない。
■「藤真が出るしかない!!」
インターハイ地区予選で湘北を苦しめた翔陽。翔陽は強豪校でありながら監督がおらず、キャプテンである藤真が監督を兼任していた。そのため、藤真は試合の途中まで監督として指示を出し、ピンチを迎えた段階で出場するも、結局2点差で湘北に負けてしまったのだ。
ここで一つの疑問が挙げられる。試合を観戦していた田岡監督が「藤真が初めからプレイヤーに専念することができていたら…もしちゃんとした監督が翔陽にいたら…」と思ったように、もしも藤真が前半から出場していたら果たして試合の結果は異なっていたのか。たらればの話だが、多くの読者が一度は考えたことがある話ではないだろうか。
以上、『SLAM DUNK』の監督たちが見せた、勝敗を分けることになった作戦について紹介した。選手たちだけでなく、監督やベンチ要員たちも試合を戦っている。選手たちに目がいきがちではあるが、監督たちの采配に注目しながら試合を読み返してみるのも非常に面白い。さまざまな視点から、再度『SLAM DUNK』の試合を楽しんでみてはいかがだろうか。