■モビルスーツに生身の人間が特攻する無謀

 ガンダム作品の魅力の一つに、迫力のMS戦闘がある。しかし、第49話『天使の輪の上で』にはMS同士の戦いではなく、MSと生身の人間が戦うシーンが。

 要塞エンジェル・ハイロゥに潜入したウッソは、ビキニ姿に白兵戦用の武装をしたネネカ隊に遭遇する。ネネカ隊は、カテジナ・ルースの「この戦法は絶対に白い奴に勝てる」「ネネカたちのその美しい姿は白い奴のパイロットを幻惑させる効果があるんだよ」と諭され、この無謀な作戦に応じた。

 もちろんMSと生身の人間の戦力差は歴然であり、ネネカ隊はウッソの搭乗するV2ガンダムに殲滅される。その死に様はあまりにも呆気なく、ウッソの「これは戦争じゃないよ」という悲痛な叫びが印象的だった。

 リーダーであるネネカ・ニブローは最期まで砲撃を続けたが、V2ガンダムのビームサーベルに焼かれ「グェッ」という断末魔の叫びと共に戦死。後味の悪さが残るトラウマ回だった。

■業を背負った悪女カテジナ・ルースの末路

 最後に紹介するのは、最終話『天使たちの昇天』で描かれた悪女カテジナ・ルースの末路だ。全51話の『機動戦士Vガンダム』で、序盤はウッソのペンフレンドであり、良いお姉さんキャラであったカテジナ。

 だが、戦争という狂気に魅入られマリア主義に傾倒したことで、悪女と言われるに相応しい行為を繰り返すことに。そしてウッソとの戦闘で発狂し、物語のラストシーンでは視力と記憶を失いウーイッグへ帰郷しようとする。

「いえね、冬が来ると訳もなく悲しくなりません?」というセリフを残して去るカテジナに、順風満帆ではない未来を想像し、何とも言えない感情を抱いた視聴者も多かっただろう。

 序盤のお姉さんキャラから一転、多くの業を背負ったカテジナの末路はガンダムシリーズきっての鬱展開と言えよう。

 

 今回は紹介できなかったが、『機動戦士Vガンダム』には主要キャラクターのオデロ・ヘンリークの死、各回で壮絶な死に際を見せるシュラク隊など、トラウマシーンはまだ多く存在する。ガンダムシリーズが戦争をテーマとしたアニメである以上、キャラクターの死や目を背けたくなるようなシーンは避けては通れない道なのだ。

 現在は地上波アニメでの凄惨シーンは少なくなっているが、呆気なく人が死んでいくキャラクターたちは戦争のリアルさを表現しているとも言える。『水星の魔女』の“鬱展開”もまた、戦争をテーマとするガンダム作品の表現方法の一つであり、いわば宿命のようなものだろう。興味のある方は、鬱アニメと言われる『機動戦士Vガンダム』もぜひ振り返ってみてほしい。

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