『名門!第三野球部』に『4P田中くん』も…努力と根性があればレギュラーになれる!? “不遇を乗り越えた80年代の高校野球漫画”3選の画像
週刊少年マガジンコミックス『名門!第三野球部』第1巻(講談社)

 令和の世代では、泥臭い根性や気合といった言葉は消えつつある。いや死語といっていいかもしれない。しかし80年代、少年野球の真っ盛りを経験した筆者にとって、努力と根性は必須だった。これは野球漫画にもいえることだと思う。

 そこで懐かしくもあるが、令和では考えられない不遇を乗り越えた80年代の高校野球漫画3選を紹介していこう。

■「僕達…クズですか?」三軍から泥臭く這い上がる姿に感動!『名門!第三野球部』

 見出しからとんでもないパワハラになってしまうが、むつ利之氏による『名門!第三野球部』(講談社)では欠かせないシーンだ。

 主人公・檜あすなろが所属する桜高校野球部は、甲子園の常連校で三軍までチームがある。一軍の選手はエリート揃いで、プライドがめちゃめちゃ高い。

 かつて“いじめられっ子”だったあすなろは、野球も素人同然。当然ながら三軍となり、毎日草むしりとボール拾いに一軍のユニフォームを洗濯するなど雑用ばかりで、野球の練習なんてさせてもらえなかった。しかも、一軍の選手たちはチームメイトのはずの三軍選手たちを「クズ」呼ばわり。(ひどくないか……!?) その反面、監督の鬼頭は一軍選手を「さぼるな!」と一喝するので“監督は味方なんだ”と思っていた。

 そんなとき、クズ扱いされた三軍の選手がエースを突き飛ばしてしまうという事件が起こる。あすなろはその際、申し訳なさそうに「僕達…クズですか?」と聞くのだが、監督は「ああ、そうだ。クズだ」と突き放す。ええ~!そりゃないぞ鬼頭さん! 普通の高校生なら泣くよ……!って、あすなろ泣いてますがな!

 しかし、退部をかけて一度だけ試合をしてもらえることになった三軍選手たちは、元一軍で鬼頭を殴り退部した主砲の海堂タケシを味方につけて指導をしてもらう。人数も足りずに女子生徒の力も借りながらだったが、もともと三軍で失うものもない彼らは泥と汗と涙にまみれて必死にもがきながら前へ進んでいくのだ。この姿を見たいじめっ子たちも改心し、あすなろを応援するようになっていった。

 この作品の素晴らしいところは、“落ちこぼれ”と言われた彼ら第三野球部メンバー全員にスポットが当てられていることだ。そして海堂や田村達郎など、天才肌の選手たちもあすなろに影響を受け、涙を流しながら必死になっていく。とくに最強のライバルとなる、敵チームの天才・桑本聡の鬼のような努力ぶりは応援してしまったな。

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