『フランダースの犬』『ロミオの青い空』も…かつての『世界名作劇場』で登場した今考えても悲しすぎる境遇の主人公たちの画像
『世界名作劇場』完結版『フランダースの犬』 [DVD](バンダイビジュアル)
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 1970年代から人気を博し、お茶の間の子どもたちを夢中にさせていた『世界名作劇場』。『アルプスの少女ハイジ』や『あらいぐまラスカル』といった、現代においても名を残す名作を生み出した本シリーズには、子どもながらに胸をえぐられるほど悲しい境遇の主人公が登場する。

 彼らの過酷な境遇でも明るく前を向いて生きようとする姿に、心うたれた人も多いだろう。そこで今回は『世界名作劇場』のなかから、今考えても悲しすぎる境遇の主人公たちを紹介しよう。

■不運が続きすぎるネロの人生『フランダースの犬』

 イギリスの作家・ウィーダ原作の児童文学『フランダースの犬』は、1975年に全52話が放送された。

 1870年ごろのベルギー・フランダース地方を舞台にした本作。主人公は絵を描くことが大好きな10歳(原作では15歳)の少年・ネロだ。

 両親はすでに亡くなっており、ネロは祖父のジェハンと2人暮らし。ジェハンは牛乳を運搬する仕事をしているが、戦時中に受けた古傷や、高齢なこともあり、体調が思わしくない日もしばしばあった。

 心優しい少年・ネロはそんな祖父の手伝いをしながら、画家になる夢を叶えるために絵を描く日々。労働犬として酷い扱いを受けて弱っていた犬・パトラッシュを相棒に迎え、2人と1匹の生活は貧しいながらも穏やかに過ぎていく。

 しかし、仕事を奪われたり、放火の疑いをかけられたりと、不運が続いていくネロ。さらに、祖父も亡くなり、家賃を滞納した家からも追い出され……、最終的に生きることに絶望した彼はパトラッシュを人に預けて行方をくらましてしまうのだった。

 絵画の才能がありながらも夢を叶えることができず、最後に念願だったルーベンスの絵を見ながら亡くなってしまうネロ。そんな彼に最後まで寄り添ったパトラッシュという存在がいてくれたことが唯一の救いだが、それにしてももっとどうにかならなかったのか……と、今でも胸をえぐられるような切なさを覚えるのは筆者だけではないだろう。

■家族のために人身売買の契約書にサインを…『ロミオの青い空』

 1995年に全33話が放送された『ロミオの青い空』は、ドイツの作家であるリザ・テツナーの『黒い兄弟』が原作だ。19世紀のスイスにある小さな村に生まれた主人公・ロミオ。彼は幼いころに父親を戦争で亡くすが、母・ジェシカと再婚した義父・ロベルトの温かい愛情に包まれ、幸せに暮らしていた。

 しかし彼らの住む町へ人身売買を生業とする通称“死神”ルイニがやってきて、ロミオに狙いを定めてしまう。ルイニは彼を手に入れるためにロミオの家に唯一残っていたトウモロコシ畑に放火し、一家は収入源を失うことに。さらに、それだけでなく火事によってロベルトが怪我をし、失明してしまうという不幸が続くのだった。

 ロミオはロベルトの治療費を手に入れるため、ルイニの持ちかけた人身売買の契約書にサインをし、半年間という約束でミラノへ出稼ぎへ行くことを決断。煙突掃除夫として雇われ、牢屋のような倉庫で暮らす日々を過ごすことになるのだが、そこでできた仲間たちともにたくましく生き抜いていく……というストーリーだ。

 幼い少年が、家族と遠く離れた場所へ出稼ぎに行かなければならないという過酷な運命。平和な日本ではあまり聞かない話ではあるが、現代でも世界の人身売買は行われているという。子どもながらに悲しくなる作品ではあったが、大人になった今見てもいろいろと考えさせられる作品だと思う。

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