■艦船外からのビームサーベル突き刺し

 同じくビームサーベルを使ったシーンは、太田垣康男氏による漫画で、OVAと劇場版が制作された『機動戦士ガンダムサンダーボルト』の中でも描かれている。

 破壊されたスペースコロニーの残骸が漂う、帯電したデブリによって雷が鳴り響く「サンダーボルト宙域」での悲惨な戦いを描いた同作。その中で、ジオン公国軍の女性技師・カーラを発狂させた出来事が、モビルスーツのビームサーベルによって技術者を蒸発させた連邦軍による攻撃だ。

 艦船を制圧中だった連邦軍が、艦隊の外からジム・キャノンのビームサーベルを突き刺し、自爆スイッチを押そうとするジオン軍の技師たち数人をまとめて蒸発させた。

 連邦軍のメカニックであるコーネリアスが「起爆スイッチを切って!!」「これ以上殺し合うのはやめよう」と艦内で相手を説得する中で、艦船外から不意打ちで行われたこの攻撃。もう少しで両者が和解しそうなタイミングで、技師たちはスイッチを押す間もなくコーネリアスの至近距離で焼かれてしまったのだった。ガンダムファンにも改めてモビルスーツの巨大さと、おぞましさを認識させたこのシーン。悲劇性が非常に高く、「サンダーボルト宙域」でのあまりにも惨い戦いをあらわすのにこれ以上ないエピソードのひとつだろう。

■ヤクト・ドーガが女性兵士を握りつぶしてしまう

 このように、もともと巨大ロボットであるモビルスーツ。そのあまりにも大きな力は生身の人間からすればとてつもないもので、1988年の映画『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』でも残酷なシーンとして描かれた。

 ギュネイ・ガスが操るモビルスーツ「ヤクト・ドーガ」の手に握られ、人質に取られてしまった連邦軍兵士ケーラ・スゥ。主人公であるアムロは、フィンファンネルを使って密かにケーラを救おうとしたが、フィンファンネルの反応が敏感すぎたためにヤクト・ドーガを攻撃してしまう。そして逆上したギュネイ・ガスにより、ケーラは握りつぶされてしまうのだった。

 短い時間で多くのことが起こったシーンのため、情報の密度が濃く、初見では衝撃を受ける暇がなかったかもしれない。

 しかし繰り返して見てみるとかなりトラウマ度は高い。全体的な露出が少ないとはいえ、ケーラはアストナージの恋人で序盤に頻繁に出ているキャラだ。そんな彼女があまりにも簡単に殺されてしまい、また握りつぶされるカットもかなり生々しく描かれている。作品を理解するほど、見返すたびに惨いと感じるシーンだ。

 以上、今回モビルスーツと生身の人間が戦うエピソードを3つ紹介したが、どれもインパクトが強く、脳裏に焼き付いてしまうシーンばかりだ。『機動戦士ガンダム 水星の魔女』もまたショッキングな形で第1クールの幕を閉じたが、4月からの第2クールでどのような展開を迎えるのか。戦々恐々としながらも放送を楽しみに待ちたい。

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