昭和時代のテレビ番組には、アニメや特撮と同じ「30分」ほどの「児童向けテレビドラマ」が多かった。今よりももっと子どもたちにとってテレビが身近な存在で、自分たちと同じ「子ども」が主人公のドラマが人気を集めた。
たとえば、1969年(昭和44年)からTBS系列で13年間も放送された『ケンちゃんシリーズ』は児童向けドラマとして有名な長寿番組。主人公の少年・ケンイチを中心に、学校や家庭で起きる子どもたちにも馴染みのありそうな小さな事件が1話完結で描かれている。
またシリーズ3作目となる『すし屋のケンちゃん』以降では、ケンイチの実家が「ケーキ屋」「おもちゃ屋」「パン屋」など子どもが好きそうなものを扱うようになった。そのため当時の子どもたちが抱いていた「自分の家が〇〇屋さんならいいのにな?」の願いを叶えると同時に、ケーキを作る工程やおそばの出前など「社会見学」的な楽しみもできた。
思えば今ではすっかり珍しくなってしまった、子どもが主人公の「児童向けドラマ」。今回は昭和時代に放送された懐かしの作品をいくつか紹介してみたい。
■魔法の道具をめぐって魔女と5人の子どもが大騒ぎ
誰もが子どもの頃に一度は考えたであろう「もしも魔法が使えたなら?」を実現させたのが、1976年(昭和51年)より放映されたテレビドラマ『5年3組魔法組』だ。
本作は小学5年生の仲良し5人組が、魔女ベルバラからもらった魔法の道具で騒動を起こす物語。筆者は当時ベルバラが跨るジェットつきホウキに憧れており、魔法の道具を使うときの呪文「アバクラタラリン クラクラマカシン」を今でもスムーズに唱えることができる。
ベルバラは子どもたちに魔法の7つ道具が入った「MJバッグ」を預けるが、意地悪な彼女は5人がバッグを使って何か騒ぎを起こすのではと期待したのだ。とはいえ、ベルバラは子どもたちが本当に困ったら手を貸しているし、最終回では彼女の窮地を皆で力を合わせて乗り越えるなど「魔女と人間の子ども」の友情も描かれている。
作中でのベルバラはいわゆる「困った人物」であるものの、エンディング『魔女はいじわる』の歌詞では子どもたちとの「悪友」的な関係が語られるなど、どこか憎めないキャラクターだった。
■7人の子どもたちが知恵と勇気で怪人二十面相と戦う
今も昔も子どもが憧れる「探偵」をテーマにしたのが、1975年(昭和50年)から放送された『少年探偵団(BD7)』。タイトルに含まれる「BD7」とは「Boy Detectives Seven」を略した彼らの愛称だ。
江戸川乱歩が1937年に発表した『少年探偵団』を原作とするが、舞台は放映当時と同じ昭和50年で、BD7が当時流行った「ローラースルーゴーゴー」に乗っていた。
本作は怪人二十面相の犯罪を阻止するため明智小五郎や少年探偵団が活躍する物語。二十面相は邪魔なBD7を本気で抹殺しようと企んでおり、地下室に監禁したうえで大量の水を入れたりと子ども相手であろうとも容赦のない攻撃が恐ろしかった。
二十面相に対抗するため団員たちは各々が秀でた特技を持っており、例えば紅一点の「マジョ」こと秋吉めぐみは得意の「手品」を活かして活躍するし、「オウム」と呼ばれる羽柴荘二は「モノマネ」でピンチを切り抜けている。
そんな彼らの中で筆者が記憶に残っているのが副団長の篠崎はじめこと「ガッツ」だ。ガッツはアメリカンフットボールで鍛えた身体とタックルを武器に大人さえ弾き飛ばすが、何時もプロテクターやヘルメットを装着していたのでひとりだけ「大変そう」だった。
BD7の団長「小林少年」こと小林芳雄役の黒沢浩さんは、当時人気子役だった・キャロライン洋子さんの実兄で、作中でもふたりは兄妹役を演じている。
また、小林以外の団員は小学生だが、かなりの頻度で恋愛要素が盛り込まれるも「失恋」で終わっていたのが印象的だった。