■「スゴい」を通り越して「怖い」…? レンタル彼女・パパ活を予見

 次は、62話「レンタル彼女」から。

 同僚から食事会の誘いを受けた主人公・常仁一人。しかし、それには女性同伴が条件だった。女性の知り合いがおらず困り果てた常仁は、その夜、借りてきたレンタルビデオを見ながら一人きりの部屋で涙に暮れる。しかし、偶然出会った喪黒に女性を紹介してもらえることになった。

 食事会にレンタル彼女のエリを連れて行き、ことなきを得た常仁。しかし、彼女のあまりの美しさに、また会いたいという気持ちが募ってしまう。

 一度きりという約束だったが、常仁はどうしても彼女に会いたいと喪黒にすがり、「どんなことになっても知らない」という言葉を受けながらも、また会える機会をもらえることに。

 後日、家にエリが訪ねてくるのを今か今かと待っていると、ついに彼女が現れた。しかし彼女には“マネージャー”と称する裏社会ふうの男が同伴しており、「これからもひとつよろしゅう」と怪しげな笑みを浮かべる。今後も彼女に会うために多大なお金が絞り取られてしまうことを予感させる、どうにも後ろ暗いエンディングだった。

「レンタル彼女」、いわゆる恋人代行サービスが始まったのは2012年頃、翌年以降にテレビで紹介されてから急速に市場が拡大したといわれている。名称や話のエンディング含め、20年以上前にここまでのストーリーを描いていたのは、まさに未来予知といえるだろう。

 なおこの話は、“今はなんでもレンタルできる時代だが、愛情はレンタルできない”と言い残して去っていく喪黒の後ろ姿で終わっていたが、実際には愛情ですらレンタルできる世の中になってきていたりもする。そこだけは、藤子不二雄Aさんも想像できなかったのかもしれない。

 このほか12話「白昼夢」では「昼キャバ」が登場するなど、サービス業における藤子不二雄Aさんの先見の明は恐ろしいほど的確だ。

 また「主婦タレント」という話では、タレント化する主婦たちに憧れる主婦のところに喪黒が現れ、彼女に“主婦タレントオーディション”を勧める。主人公の主婦は家庭をほったらかしにして“素人の主婦”という枠を超え「タレント」として脚光を浴びようとし、最終的に失墜してしまう……という姿が描かれていた。

 SNSを通して、「人からどう見られているか」や「映え」を気にする世の中。藤子不二雄Aさんは、ここでもSNS社会を皮肉たっぷりに予知していたのではないだろうか。

 今、もし『笑ゥせぇるすまん』に新しいストーリーが生まれたらどうなるか。怖いけど未来の日本を見てみたいかも?

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