「この世は 老いも若きも 男も女も ココロの淋しい人ばかり…そんな、みなさんのココロのスキマを お埋め致します」というセリフから始まる、藤子不二雄Aさんによるブラックユーモア作品『笑ゥせぇるすまん』。
1989年から1992年まで大人向け番組『ギミア・ぶれいく』内で10分枠のコーナードラマとしてアニメ化され、メインターゲットとなるサラリーマン層だけでなく子どもたちからも多大な人気を集めていた。
漫画の連載やアニメが放映されていたときはバブルの絶頂期だったので、今とは世の中の様子や各話の主人公となるキャラクターたちの立場も現代とは異なり、時代を感じるものばかりだ。
しかし中には、令和の世の中を未来予知していたかのようなエピソードも存在する。今回はそれらを紹介したい。
まずはアニメ1話の「たのもしい顔」。
これは母、妻、息子の4人で暮らす会社員の頼母雄介が主人公の話だ。どこに行っても人に頼られる頼母雄介は、バーで出会った喪黒福造に「私が甘えられる人物なんてどこにもいない」と打ち明ける。そこで喪黒から“女神”を紹介すると言われ、お馴染みの「ドーン!」の洗礼を受けたのだった。
頼母は吹っ飛ばされ、金色に輝く大きな観音様に出迎えられる。彼はそこで、これまでの責任感にあふれた堅い顔を崩し、母親に甘える赤ちゃんのように“赤ちゃん返り”するのだった。
後日、心配した妻が様子を見に行くと、汚い部屋の中で赤ちゃん返りした頼母が太った中年女性に裸で甘えている光景が広がっていた……というストーリー。
最近では、女性の母性的な優しさや包容力に甘えたいという気持ちを表現した「バブみ」や「オギャる」という言葉がネット上で多用されている。疲れた現代人の“誰かに甘えたい”という気持ちは、バブル期以前から人間の根底にあるものなのかもしれない。