■厳しい年月が頼りない少年を大人にした、ケンスケとアスカ

 アニメでは『新世紀エヴァンゲリオン』にも意外だと思えるカップルがいる。それがケンスケとアスカだ。

 1995年に放送された最初のTVアニメ版から数えて実に25年以上続いたエヴァンゲリオンシリーズの完結作でもある『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の終盤で明らかになった。中学生の頃の2人の関係性からは全く想像することもできず、どちらかというとアスカとシンジがくっつくのではないか? と思われていたはずだ。

 それが、作中で14年の年月が経った後に、ケンスケとアスカがいつの間にかどこかいい感じの関係になっていたのだ。しかし、それにはちゃんと理由がある。シンジが宇宙空間へ初号機と共に封印されていた14年の間に、アスカやケンスケは生き残った人間を救うための活動をともにしていたからだ。

 中学時代のケンスケはどこか頼りない少年だったが、ニアサードインパクトを経験し、生き残って厳しい環境をサバイブする生活の中で頼れる大人へと成長し、アスカにも認められる存在となっていた。生き残った人たちが共同生活を営む第3村でも村の人々を支えるために地道に活動する働き者となっており、アスカとも自然で良好な関係を育んでいたのは、過去のケンスケを知る視聴者にとっては驚きだった。

 アスカはクローン人間として作られた出自の特異性ゆえに、常に自己を認めてくれる他者の存在を望み葛藤していた。そんなアスカに寄り添い最後まで見守っていたのがケンスケでもあるので、その優しさがアスカの心を動かしたのかもしれない。


 漫画やアニメでは、時に思いも寄らなかった組み合わせのカップルが急に成立したように見える場合があるが、後からよくよく考えてみると、そこには必ずなにがしかの理由があることに思い至る。そして、それが意外であれば意外であるほど、さらにその後の展開も気になってしまうのだ。

 実社会においてもカップルの成立過程には様々な形があるのと同じように、漫画やアニメの中でも男女の関係は一筋縄ではいかないものだし、予定調和を超えた意外なカップルの成立に驚き、その理由を考察してみるのもまた、物語の楽しみ方のひとつではないだろうか。

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