『エヴァンゲリオン』に『ナルト』なぜこの2人が結ばれた…? 読者・視聴者が困惑した「急造カップル3組」が成立した理由を考察の画像
『シン・エヴァンゲリオン劇場版』(c)カラー

 魅力的なヒロインが複数登場する漫画やアニメは数あれど、中には伏線やその素振りがあまりなく、脈がありそうには全く見えなかったのに、いきなり成立してしまうカップルがいる。ある程度「誰が誰とくっつくのか?」を予想しながら(あるいは期待しながら)読んだり観たりしているため、そうした急な展開があると読者や視聴者は「え? まさかこの2人が?」と驚いてしまうことになる。

 しかし、その後の物語の盛り上がりに一役買ったりすることもあるので、読者や視聴者の想像を超えて成立したカップルは、単なる意外性の産物というだけでなく、ストーリーの上でも重要な存在と言えるかもしれない。そんな予想外だったカップルを3組、漫画やアニメから紹介していきたい。

■負けヒロインが大逆転!? ナルトとヒナタ

 岸本斉史の連載デビュー作にして、世界的にも大ヒットした代表作『NARUTO -ナルト-』(集英社)には、様々な急造カップルが登場している。それは作中で「第四次忍界大戦」の終戦後、世界が平和になったことで多くのキャラが次々と結婚をするという展開を取り入れていたからだ。その中でも一番驚いたのが、主人公のナルトとヒナタのカップル成立である。

 ナルトは登場時から同期のサクラのことを好きだと何度もアピールしていた。ヒナタはナルトに想いを寄せながらもそれを陰で見守るタイプだったため、多くの読者は「ナルトはいずれサクラとくっつくのでは?」と予想していたはず。ヒナタは、ある意味では少年漫画の王道パターンのひとつとも言える、いわゆる「負けヒロイン」だと思われていたのである。

 しかし、結果としてそうした読者の予想は覆されることとなった。その大きな理由としては、物語が進行していく中でヒナタが成長を遂げ、色々な意味で魅力的な女性になっていったことだろう。ナルトを陰で見守るだけではなく、ナルトと一緒に歩んでいきたいという気持ちを強く持つようになったヒナタは、「私はナルトくんが―― 大好きだから…」と素直な気持ちを言葉にしている。

 ナルトもそんな健気なヒナタに惹かれていき、第四次忍界大戦ではお互いをサポートして共闘する仲にまで発展。そして、大戦終了後には結婚して2人の子ども、ボルトとヒマワリを授かり幸せな家庭を築くこととなった。

 それまでのヒナタの努力や一途な想いが報われた形にもなっているので、その結婚に驚いた読者も多かった一方では少なからず祝福の声も上がっていた。ただ、作者の岸本斉史は連載終了後に受けたインタビューで、「ナルトとヒナタが一緒になることは結構早い段階で決めていた」と語っていて、その構想に基づいて敢えて「ナルトとサクラがくっつくかのようにミスリードさせる」描写をしてもいたようなので、読者はいわば作者の手のひらで踊らされていたわけだが、このカップル成立はいい意味で予想を裏切るものだったのではないだろうか。

■社長令嬢と宇宙最強のヒモ!? ベジータとブルマ

 また、これも世界的な大ヒット作である鳥山明の『ドラゴンボール』(集英社)でも、ベジータとブルマのカップル誕生には驚いた読者が相当多かったのではないだろうか。

 ベジータといえば、その初登場時にはピッコロを上回るほどの悪役であったのに対し、ブルマは主人公・悟空とともに物語の最初期から親しまれていたため、この2人が将来夫婦になるなど誰にも想像が付かなかったことは間違いない。ベジータはサイヤ人の仲間であるナッパを用無しだと判断するとあっさり殺し、ナメック星でも戦意を喪失したキュイやドドリア、ザーボンを無慈悲に殺してしまうなど、その行いの悪辣非道さは一貫していた。少なくともその時点までは、絶対に改心することのない悪の存在だと誰もが思っていたはずだ。

 そんなベジータがフリーザとの戦いの後に地球で過ごすことになると、ブルマといつの間にか結ばれていた。未来からきた息子・トランクスによると、籍は入れていないというが衝撃の事実に悟空以外のキャラも驚いてしまう。

 この2人がなぜくっついてしまったのかを考えると、ブルマが普通の男性に満足できなかったというのが主な理由なのではないかと思われる。ブルマは頭脳明晰なだけでなく、世界有数の大企業であるカプセルコーポレーションの社長令嬢として経済力もあり、あらゆることが自分の望み通りになってしまう。

 そんな人生を退屈だと感じ、常に刺激を求めるブルマだからこそ、並大抵の男性では飽き足らない。そのため、普通なら誰も選ばないであろうベジータを好きになったのだろう。逆に、王子として育ち地球の生活にも不慣れで、およそ生活力があるとは思えないベジータにとっても、ブルマが自分に干渉をしない上にあらゆるものを与えてくれるのは好都合で、居心地が良かったはずだ。

 2人の関係は、意外にバランスがよく取れたいい夫婦として描かれており、ベジータが魔人ブウとの戦いで死ぬことを覚悟した際には、ブルマへ向けた言葉をしっかりと残している。

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