■巨匠二人が仕掛ける破天荒な“将棋バトル”!『the Killing Pawn』諫山創×皆川亮二
コラボ作品の特徴は、なんといってもタッグを組む二人の特色が混ざり合い、新たな“魅力”が生み出される点だが、ときにはとんでもない化学変化を巻き起こす場合もある。
『週刊少年マガジン』(講談社)に読み切り作品として掲載された『the Killing Pawn(ザ・キリング・ポーン)』も、そんな作品の一つだ。
本作を執筆したのは、『ARMS』や『ADAMAS』などの作品で有名な皆川亮二氏。そして原作は『進撃の巨人』の諫山創氏が手掛けるという、なんとも豪華なコラボ作品である。
しかも本作のテーマは“将棋”という、今まで両氏が踏み込んでこなかった領域だ。謎の主人公・力道歩が、プロ棋士を相手に次々に勝負を挑んでいく短編作品である。
設定だけを見れば、普通の“将棋漫画”に見えるのだが、物語冒頭、読者の予想を裏切る、とんでもないシーンが飛び出す。
力道歩は「あんたを“歩”だけで倒してやる」と宣言するのだが、テクニックやトリックを使う……ということではなく、なんと「“歩”を置いた衝撃波で相手を吹き飛ばす」という、とんでもない荒業が飛び出すのだ。
この読み切り漫画、実は“将棋で物理的に相手を倒す”という、なんともシュールな作風の一作だったのである。作中の登場人物たちはいたって真面目なのだが、衝撃波や将棋盤を使った“物理攻撃”の数々は、もはや「将棋じゃあないだろう」と突っ込んでしまうこと請け合いである。
巨匠二人がタッグを組んで堂々としかけた、あまりにも破天荒すぎる“将棋バトル”漫画であった。
作画と原作、共通のテーマ性、シリアスなギャグ……一口に“コラボ作品”と言っても、その内容や方向性は実にさまざまだ。
漫画家、原作家の“色”はそれぞれであるが、それらが混ざり合って新たに生み出される作品たちは、ほかではなかなか見ることのできない新たな魅力に満ち溢れている。