■“悪魔”呼ばわりされても仕方がない…驚きの“人体改造”も
多くの人々を救ってきたブラック・ジャックだが、ときに人体改造としか言いようがない手術をすることもある。
「化身」(秋田文庫17巻収録)というエピソードでは、事故に遭い脳にダメージを負った少年の命を救うため、同じく事故で瀕死になっていた彼の愛馬の脳を移植した。これは少年の父親が「生きていられさえすればいいのだ 何になったっていい」と言ったからだが、それにしても驚きの発想である。のちにすべてを知った父親に“悪魔”と罵られてしまっているのも、まあ無理はない。
さらに「人間鳥」(同17巻収録)では、生まれつき脚の悪い女性が空に憧れていることを知り、整形手術で鳥のような翼をつけてあげていた。最終的には「いっそ鳥にしてください」という彼女の頼みを叶え、人間を鳥にするという神業を成し遂げる。
どちらのエピソードも人間が踏み込んでいい領域を超えているような気がして、思わず戦慄してしまう。いやはや、天才は紙一重とはよく言ったものである。
手探り手術にセルフ手術、人体改造など、ブラック・ジャックが作中で見せてきた神業の数々。そのほかにも思わず驚愕してしまうような手術は多く、手塚氏の発想の豊かさには読むたび何度でも驚かされる。
『ブラック・ジャック』ファンも、今まであまり作品を知らなかったという方も、連載50周年を機会に手に取って読み返してみてはいかがだろうか。