少年・青年漫画では数多くのバトルが描かれてきたが、たとえ敵のなかにも心の底に優しさを隠しているのではないかと思うキャラも多くいる。そんなキャラの戦闘シーンでは、敵ながらも敬意を感じてしまうことも少なくない。
そこで今回は、私たちの“少年心”を大人になってからも掻き立ててくれるキャラたちの戦闘シーンを紹介したい。
※以下には、コミック『ONE PIECE』『NARUTO』『終末のワルキューレ』の一部内容が含まれています。ストーリーを解説するのが本記事の主目的ではありませんが、気になる方はご注意ください。
■『ONE PIECE』“若き剣士”ゾロの未来に懸けたミホーク
はじめに紹介するのが、尾田栄一郎氏による『ONEPIECE』に登場する「ジュラキュール・ミホーク」だ。世界最強の剣士で通称“鷹の目のミホーク”と呼ばれる彼の初登場は、グランドライン(偉大なる航路)突入前の海上レストラン「バラティエ」でのこと。
当時、ミホークは「王下七武海」という政府に容認された組織の1人だったが、そんな彼は“ヒマつぶし”という理由で一隻の巨大なガレオン船を沈め、突如バラティエに来訪した。
ミホークに会うために海へ出たゾロは勝負を挑むが、短剣で弄ぶように戦われ、まったく歯が立たない。心臓を貫かれそうになりながらも一歩も退かないゾロに対し、「なぜ退かん」と問うミホーク。「死んだ方がマシだ」と、勝利への執着をあらわにしたゾロの姿を見た彼は愛剣の黒刀で一太刀し重傷を負わせるも、致命傷を避けていた。
「最強」という地位に長く君臨し退屈していたミホークは、“若き剣士”であるゾロの懸命さに心を打たれたのかもしれない。
「貴様が死ぬにはまだ早い」「このおれを越えてみよ ロロノア!!!」と最後に告げ、”未来ある敗北”をゾロに与えて姿を消したミホーク。登場から立ち去るまでのほんの一瞬の出来事だったかもしれないが、ミホークの懐の大きさ、ゾロのさまざまな思いがわかった大切な戦闘だったと感じた。
■2人の思いに尊さを感じた…『NARUTO』再不斬と白
続いては、岸本斉史氏による『NARUTO』から、“霧隠れの鬼人”桃地再不斬と、彼の盾となって散った白(ハク)を紹介したい。
再不斬はある日、孤児だった少年・白と出会い、“道具”として隣に置くことにする。忌み嫌われる「氷遁」の血継限界を持っているにもかかわらず拾ってくれた再不斬のことを、白は大切な人だと思い、忠誠を誓っていた。
ナルトとの戦いで敗北を悟った白は、再不斬の求めた“道具”にはなれなかったと感じ、潔く死を選ぶ意志を見せたが、その直後、カカシの「雷切」から身を挺して再不斬を守り、心臓を貫かれて絶命する。
しかし実は再不斬も白を道具としてではなく、人として大切に思っていた。その後、白を失った再不斬は自分を利用し、さらに死んだ白を愚弄したガトーへと反撃し、最終的に死んでいく。
どんな自分でも必要とされたことが嬉しく再不斬の“道具”に徹した白、そして心底では白への優しさを持っていたものの、冷徹な“忍”として最後まで貫き通した再不斬。
主人公・ナルトたちの最初の敵として登場した2人だが、敵にも抱えるものがあるということをナルトも感じたのだろう。「オレあいつら好きだった」と、のちにカカシに言っている。
それぞれの正義のもとで戦い切った二人には、やはり敵ながらも尊さすら感じてしまう。