年末年始の休暇中に、懐かしの少年漫画を久しぶりに読みふけるという人も多いと思う。少年漫画の醍醐味といえば、独自の修行法によって新技を身に付けたり、肉体を強化するといったものがある。変わった修行法は昔の漫画などには多く存在して、それに憧れて真似をする少年たちも多かった。「かめはめ波」はもとより、傘を構えた「アバンストラッシュ」に、壁を相手に練習をした「二重の極み」や「通背拳」など、筆者も必死に真似をしようとした思い出がある。
そんな少年たちが必死に真似をしたくなるような、読むだけで強くなれたような気がしたバトル漫画の修行法を、名作たちから振り返っていきたい。
■公園の砂場を夢中で突いた影慶の毒手
変わった必殺技の多い漫画といえば、宮下あきら氏による『魁!!男塾』(集英社)だ。そして、この作品に登場する死天王最強の男、影慶の死奥義である「愾慄流 穿凶毒手」が当時の少年たちを夢中にさせた。
毒手とは読んで字の如し、毒をまとった手で相手に触れるだけで致命傷を与えることができる技。そして毒手の作り方は、毒草や毒虫、毒薬の混ぜ込んだ砂を手で何度も突き、毒を少しずつ手に浸透させるという方法である。
毒手は今では割とメジャーであるが、昔はそれほど知られていなかった。そのため「そんな凄い技があるのか!」と少年たちは目を輝かせ、校庭の砂場を手を突いては指先を茶色に染めて「毒手」の真似事をしたものだ。
■布団をひたすら撃ち抜いた無空波の修行
川原正敏氏による『修羅の門』(講談社)にも、少年たちを魅了するような修行がある。それが主人公・陸奥九十九の使う「無空波」の修行法だ。
カンフーや空手では、テイクバックをせずにわずかな隙間からそのまま拳を撃ち抜く「寸勁」という技があるが、古武術陸奥圓明流に伝わる「無空波」は、そのゼロ距離版。相手の体に拳をつけた状態から打ち出すことにより、その衝撃で肉体の内部を破壊する技である。たとえ避けたとしてもかすっただけで振動が体を波打つように広がる。九十九と対戦した海堂は直撃を免れたが、技の衝撃で倒されてしまった。
この技の修練について九十九は「ふとんをね 拳をそえた状態から拳のスピードだけで撃ちぬく…」と説明している。それを聞いた木村は真似できないと話したが、これを読んだ少年たちはすぐに布団に向かって拳を押し当てて撃ち抜こうとしたのではないだろうか?
後の飛田戦で、この修行法での技が実は「虎砲」だったと知ることになるが、虎砲もかなり魅力的な技だったので、真似する者としてはどちらでも良かったと思う。