■ビート板を使って水面を歩いた?
藤子不二雄A氏による『忍者ハットリくん』(小学館)にはたくさんの忍術が登場する。
そんなハットリくんが使う忍術のひとつに、水蜘蛛と呼ばれる水の上を歩くものがある。これは忍具を使用してアメンボのように水の上を移動するようなものだが、これを見た小学生はできるかもしれない! と、プールで試したのではないだろうか。
それはビート板を足に敷いて、水の上を歩くというものだ。ビート板はかなり浮力があるので、子どもの体重なら支えられると思ったのだろう。しかし、実際に試してみるとほんの数メートル進んですぐに水の中に沈んでしまう。それでも諦めないで何度も挑戦してみるから面白い。
他にもビート板を長くつなげて、その上を走ったりといった人もいたのではないだろうか。子どもにとってビート板とはいろんな可能性のある楽しい道具であるが、現在では飛び込みも禁止されているプールがほとんどのため、ハットリくんの修行ももちろん真似してはならない。
■定番となった重りを付けた修行
読んで強くなれる気がした漫画といえば、やはり鳥山明氏による『ドラゴンボール』(集英社)が欠かせない。「カリン塔」「精神と時の部屋」「蛇の道」などなど、同作は奇抜な修行の連続だが、悟空が一番最初に行った修行からしてインパクトのあるものだった。
それが亀仙人のもとで行われた、重い亀の甲羅を背負って牛乳配達や畑の手伝いをする修行。悟空やクリリンはこんなことをして強くなれるのか? と疑問に思っていたが、修行を終えて思いきりジャンプすると、なんと軽々と十数メートルも飛び上がってしまう。
これには読者も驚かされて、重さによる効果は凄い!と勘違いをしてしまったはずである。この重さを利用した修行法は『ドラゴンボール』では定番のものとなり、道着を重くしたり、重力を数十倍や数百倍にした中で修行をして、何倍もの強さを手に入れることに成功した。
『ジャンプ』の広告では、読者の「強くなりたい」という気持ちを察してか、プレゼントページでは筋トレグッズがたびたび紹介されていた。そこには手首や足首に装着するウェイトなどもあり、筆者のように、悟空たちに憧れた読者からの応募があったのではないかと思われる。
昔の漫画に出てくるキャラのような強さに憧れる少年はたくさんいたはずだ。そして、その強さを手に入れるために奇妙な修行法でも、本気で真似をしてしまう。今思うと恥ずかしいかもしれないが、そんな思い出を残してくれるからこそ、作品の素晴らしさがある。