■「ドリブルこそチビの生きる道なんだよ!!」

 これも同じく山王工業戦でのセリフだ。後半も残り時間わずかとなり、接戦を繰り広げる湘北に対し、山王が取った策はオールコートでのゾーンプレスディフェンスだった。後半開始から湘北を散々苦しめたこの作戦を、終盤で勝っている状況でも遂行し、あくまで攻めきって勝つということにこだわる山王の王者としての姿勢には、安西監督でさえ意表をつかれてしまう。コート上でも、底なしの体力を見せる深津と沢北を相手に、リョータは前に進むことすらできずにいた。

 そのとき、深津から「抜けないピョン もうキレがないピョン」と言われたことがリョータの闘志に火を付ける。「こんなでけーのに阻まれてどうする」と吹っ切れたリョータは、心の中で「ドリブルこそチビの生きる道なんだよ!!」と叫び、集中を高める。その直後、沢北がバランスを崩した一瞬の隙を見逃さず、超低空を高速で突き抜けるドリブルで堅いディフェンスのさらに下をかいくぐって強引に突破していく。

 今、読み返してみても鳥肌が立ってしまうほどかっこいいシーンだ。強大な敵と対峙したとき、萎縮したり自信を失ってしまうことは誰にでもあるだろう。しかし、そういった局面でも決して挫けず、自身のみならず味方をも鼓舞しながら結果を残していくリョータの姿には、誰しも思わず見入ってしまうことだろう。

■「それで彼女が笑ってくれれば最高さ」

 ここまでは試合の中での名言だったが、最後にひとつ番外編的なものとして日常シーンでのセリフを紹介したい。不良グループとのケンカで入院していたリョータが退院し、桜木花道と意気投合したきっかけとなったセリフだ。リョータの彩子への恋心と、桜木の晴子へのそれとは非常に似ているということにお互いに気が付く名シーンだ。

 公園のブランコに並んで腰掛けながら「初めて見たんだ彼女を もうホレてたよ…」「速攻で入部した バスケに命かけることに決めた」「オレがチームを強くして…試合に勝って…それで彼女が笑ってくれれば最高さ」と語ったリョータは「てめーなんかにつまんねー話を…」と自嘲気味に続けるが、桜木は涙を流して共感したのだった。

 意気投合してからのリョータと桜木の息の合ったコンビネーションは、悪ガキ同士のようで微笑ましい。「1031」や「イッ!!」など、仲の良さがうかがえるシーンが多く描かれている2人だ。

 キャラクターを問わず、熱い名シーンの数々に彩られている『SLAM DUNK』だが、その中から宮城リョータにフォーカスして、その名言をピックアップした。爆発的な得点力などの派手さはないものの、湘北のメンバーを支えて勝利に大きく貢献しているリョータのかっこよさは、桜木や流川とはまた違う味わいがある。

 公開中の『THE FIRST SLAM DUNK』では、陵南戦で終了した旧テレビアニメでは描かれなかった山王戦がメインとなっている。今回紹介したセリフも含めて、映画でもリョータの勇姿に胸を打たれた人も多いのではないだろうか。もう観たという人も、これから観るという人も、一度作品を読み直してみると、映画がより楽しめるかもしれない。

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