■早瀬未沙に初対面の輝は「なんです? このオバサン」

 早瀬未沙はマクロスの航空管制主任オペレーターで、物語開始時の階級は中尉。軍人の家系に生まれ、士官学校を主席で卒業した。頭脳明晰で、難しい仕事もテキパキこなす。その落ち着いた風貌と仕事ぶりから、初対面の輝に「なんです? このオバサン」と呼ばれてしまうが、実はこの未沙はこの時まだ19歳であった。それだけ貫禄があったということだろう。

 輝が軍に入隊して未沙は上官になるも、二人の相性は最悪。お互い、モニター越しに悪態をつく仲だった。そんなある日、マクロス周辺の宙域を探索するために艦の外に出た未沙とその護衛任務にあたった輝は敵に捕まってしまう。「宇宙空間を甘く見るからこうなるんですよ。女はね、軍人なんかやらずに料理をしたり、歌でも歌ってるほうが、よっぽど可愛げがあっていいですよ」と、輝は昭和のジェンダー観全開で毒づく。

 しかし、敵の前で地球の文化を説明するために未沙と輝がキスして以降、二人の関係は少しずつ変わっていく。捕虜となった敵艦から無事に脱出した二人は先輩や部下の死などショッキングな出来事に遭遇するも、その悲しみをお互いに乗り越えようとする同僚として信頼しあう仲になっていた。

 そしてTVシリーズでは、地球へ総攻撃を仕掛けてきたゼントラーディ軍から、地上勤務へ異動になっていた未沙を輝が救って第1部のハッピーエンドを迎える。そう、マクロスのヒロインはリン・ミンメイと見せかけて実は早瀬未沙だったのである。

 終戦後の第2部では、輝、ミンメイ、未沙の三角関係が繰り広げられる。しかし、最終的に輝は未沙を選びミンメイは身を引いて遠くの街へと旅立っていく。華のあるアイドルに「オバサン」が完全勝利したのだ。   

 

 可愛らしくて華があるが、少し自分勝手でわがままな部分もあったリン・ミンメイよりも、地味ながら真面目で、女性らしい部分もある早瀬未沙を選んだ一条輝に「よくやった!」という意見が当時は多かった。アニメ雑誌も後半になるにつれ未沙を取り上げることが多くなったように思えたが、読者の皆さんはどちら派だっただろうか? 

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