■フィギュアスケートの楽曲が書きたい

 1988年のデビュー以来、35年に渡りゲーム音楽の最前線で活躍し続ける下村。ここまでコンスタントに楽曲を生み出し続けられる秘訣について聞くと、下村は大きく首を横に振りつつ「全然コンスタントなんかじゃないです!」と即否定。「私は好不調の波がとにかく激しくて、かけない時はまったくかけないんです。なんとかコントロールできないかと試行錯誤した時期もありますけど、何をやってもダメで、今はもう諦めました(笑)。毎回締め切りギリギリになんとか生まれてきてくれるっていうのが実情です」と作曲の苦労を語る下村だが、逆に追い込まれたほうがいい音楽が生まれる気がするとも。「逆境になるほど燃えると言えば聞こえはいいんですけど、きっと私がダメ人間なだけですよね(笑)。でも精神的な勢いが大切なのは実感としてあるので、結局そういうスタイルになるんですよね」と、下村流作曲術の真髄(?)を告白してくれた。

 最後に下村に「作曲家としてのこれからの夢」を聞いてみると、なんとも意外な答えが返ってきた。「フィギュアスケートの曲を書いてみたいです。子供のころから好きでよくテレビ中継などを観ているんですけど、たった一曲、数分のなかにドラマが凝縮されているじゃないですか。あの緩急やドラマ性が好きなんです。一度でいいのでフィギュアの曲を書き下ろしてみたいですね。どなたかオファー待ってます(笑)」。近年はゲーム音楽だけではなく、プロレスやラグビー、宝塚歌劇団など、さまざまな分野への楽曲提供を行なっている下村だけに、それは夢物語ではない。そして、音楽ジャンルを超えていくことこそがゲーム音楽の魅力だと下村は言う。「例えば『LoM』のボス曲『The Darkness Nova』って、もともとプロレス風にしてほしいっていうリクエストで作った曲なんです。世界観に合ってさえいれば、どんなジャンルの音楽であっても成立するのがゲーム音楽の魅力なんですよね。そう言う意味では、これからも思わぬ分野の楽曲を書かせてもらえることがあるかもしれないですし、それを考えると私もとてもワクワクしますね」と、衰えぬ制作意欲を見せてくれた。今後の活躍も、ますます楽しみだ。

《プロフィール》
しもむら ようこ
兵庫件出身、作曲家・編曲家。ゲーム「聖剣伝説」シリーズ、『ストリートファイターⅡ』「キングダム ハーツ」シリーズ、『ファイナルファンタジーXV』、『マリオ&ルイージRPG』、アニメ『ハイスコアガール』など、多岐に渡る作品で作曲を手掛ける音楽家。
 

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