「聖剣伝説」シリーズ、「キングダム ハーツ」シリーズ、『ストⅡ』の作曲家・下村陽子が明かす、感動を生む音楽作りの画像
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 スクウェア・エニックスが誇る人気ゲーム「聖剣伝説」シリーズの30周年を記念して制作されたテレビアニメ『聖剣伝説 Legend of Mana -The Teardrop Crystal-』。シリーズ初のアニメ化となる本作は、2022年10月より放送され、原作ファンに歓喜と驚きを与えつつ大反響を巻き起こした。今回は原作ゲーム『聖剣伝説 Legend of Mana』、ならびにアニメで音楽を担当した作曲家・下村陽子氏に、本作への思いを語っていただいた。

■『LoM』は念願の王道RPGでした!

「聖剣伝説」シリーズと言えば、第1作『聖剣伝説 ~ファイナルファンタジー外伝~』(1991年発売)から最新作『聖剣伝説 ECHOES of MANA 』(2022年発売)まで、30年以上の歴史をもつ人気アクションRPGシリーズ。なかでも『聖剣伝説 Legend of Mana』(以下『LoM』)は、シリーズ初の外伝作品として1999年に登場し、2021年にはHDリマスター版が発売されるなど、今もなお根強いファンが多い作品でもある。

 そんな『LoM』の音楽を担当した下村は、今回のアニメ化について「いやもう、信じられないです。アニメ化もそうですが、数あるシリーズ作品から『LoM』が選ばれたというのもビックリで、とても光栄なことですね」と驚きを隠さない。

 アニメ化されたのは『LoM』の3つのメインシナリオのうちのひとつ「宝石泥棒編」。感動のストーリー、耳に残るBGM、美麗なビジュアルの三拍子が揃ったシリーズでも屈指の人気シナリオ。「原作の魅力をすくい上げつつ、とても丁寧にアニメーションとして作ってくださっていて、これ以上ないクオリティだと思います」と下村が絶賛する通り、原作へのリスペクトと愛に溢れたアニメーションは必見だ。

 なかでも原作のBGMがふんだんに使用されている点は、ファンにとっては大きなポイント。劇中で懐かしの名曲が流れるたび歓喜の声がこだまする様子はネットのコメントからも見て取れる。下村は「ありがたいことです。サントラCDなども長期間にわたって売れ続けているらしいですし、本当に愛されているんだなと実感しています」としみじみ。

 まさに「神曲だらけ」という表現がふさわしい『LoM』だが、下村が王道のファンタジーRPGを手がけたのはこれが初めてだというから驚き。当時の心境について下村は「ずっとやりたかったんですよ。そもそもカプコンからスクウェア・エニックスに移った最大の理由が『ファンタジーRPGの音楽が作りたい』でしたから(笑)。なので『LoM』は本当に念願のタイトルで、めっちゃ気合いが入っていました」と語る。そして、そんな下村の高い熱量が、数々の神曲を生み出すこととなった。

 『LoM』以前の下村と言えば、『ストリートファイターII』や『フロントミッション』などに代表されるような、緊張感にあふれた硬質でミニマルなサウンドが主体。しかし『LoM』では郷愁あるドラマチックなメロディラインを主軸に、スケール感たっぷりなサウンドで披露している。『LoM』の楽曲について下村は「それまではわりとバトル曲をメインに据えて、それを軸として他の楽曲を作っていくパターンが多かったんですけど、『LoM』は最初にフィールド曲のスケッチをまとめて書いて、あとからバトル曲を作ったんです」と当時を回想。『ホームタウン ドミナ』や『滅びし煌めきの都市』など、とりわけフィールド曲の人気が高いのは、これが理由かもしれない。こうしてプレイヤーの琴線に触れまくった名曲の数々は、発売から20年以上経ってもなおファンの心に深く刻まれている。


■『「聖剣伝説 Legend of Mana」より「ホームタウン ドミナ」〜「滅びし煌きの都市」by Kumi Tanioka』
 

■「昔の私、こんにちは」みたいな感覚

 また下村は今回のアニメでも音楽を担当しており、アニメ用に新たに書き起こした楽曲は「レディパールのテーマ」をはじめ40曲。20年以上前に自身が作った『LoM』の音楽群に、今の自分が楽曲を加えるというのはどんな感覚なのだろう? この質問に下村は「めっちゃ不思議な感覚でした。『昔の私、こんにちは』みたいな(笑)。滅多にない貴重な経験をさせていただきましたね」と感謝の言葉を口にする。しかし同時に難しさもあったと言う。「やっぱり最初は悩みました。原作の雰囲気にどこまで寄せるべきかアレコレ考えちゃって。でも悩んでも曲はできないので、もう自然体でやろうと割り切った瞬間、メロディが鳴り出したんです。そこから先はスルスルと出てきました」と、自身にとっても思い出深い仕事となったと語る。

 こうして新旧の楽曲が作品内に違和感なく収まることとなった本作。20年来の懐かしの楽曲とともに新しい『LoM』楽曲が楽しめる機会に恵まれたことは、ファンにとっても幸せな体験と言える。

 さらに、原作ファンにとって大きなサプライズだったのが、早見沙織が歌うEDテーマ『Song of Mana -The Teardrop Crystal-』。もともとはスウェーデン語で歌われた原作ゲームのテーマ曲『Song of Mana』を日本語版にリアレンジした楽曲で、詞は下村が手がけている。下村は「もともとスウェーデン語の歌詞の元になる原詩を作ったのが私なんです。今回はその原詩をベースに、原曲のスウェーデン語の語感や雰囲気から離れないような言葉を選びつつ、日本語歌詞を制作しました」と制作の舞台裏を披露。さらに完成した楽曲については「正直に言って、ここまで原曲の雰囲気を完璧に再現してくださるとは思っていなかったので、あまりの素晴らしさに驚きました。良い意味で予想を裏切ってくれた早見さんとアレンジャーさんには感謝しかありません」と、その完成度の高さには作曲者自身が脱帽するほどだ。


■ピアノソロ:「キングダム ハーツ」より A piece of "Dearly Beloved"
 

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