■唯一キレたシーンのインパクトが大きすぎる『NARUTO-ナルト-』白
岸本斉史氏による『NARUTO-ナルト-』は、日本ではもちろん、世界中で愛される有名作品だ。本編は2014年に完結したが、現在は作画:池本幹雄氏、脚本:小太刀右京氏によるスピンオフ作品『BORUTO-ボルト- -NARUTO NEXT GENERATIONS-』が連載中である。
本作の初期に登場する敵キャラに、白(ハク)という名の少年がいる。彼は真っ白な肌と長く美しい黒髪を持ち、美少女と形容したくなってしまうほど美しい。作中でナルトも、“サクラちゃんよりカワイイ”といろんな意味で失礼な発言をしていた。
そんな彼は、“鬼人”と恐れられる桃地再不斬(ももち・ざぶざ)と行動をともにしている。再不斬は冷酷で残忍な人物なのだが、白にとっては孤児の自分を拾ってくれた恩人だった。
だからこそ、たとえ利用されているだけだったとしても、彼のためにならなんでもすると覚悟している白。このあたりのエピソードについては涙なしでは語れないのだが、それはまた別の話である。
白は見た目通り心優しく穏やかで、その素顔は植物や鳥を愛する平凡な少年だ。残酷な運命のせいで忍にならざるをえなかっただけで、本来戦いは好まない。
そんな彼は戦闘中ですら穏やかな物腰を崩さないが、作中で唯一、はっきりと怒りをあらわにしたシーンがある。裏社会の人間で雇い主でもあるガトーが、再不斬に絡もうとしたときのことだ。そばに控えていた白はガトーの腕を掴むと、普段とはかけ離れた形相で「汚い手で再不斬さんにさわるな……」と言い放った。
このときガトーの腕は折れてしまったらしく、白が相当な力を込めていたことがわかる。というか、ゴリラ並の握力である……。再不斬に手を出す人間は、いかなる相手でも許さないということだろう。軽く絡もうとしただけでこれなのだから、何かをやらかして本気で怒らせたらどうなってしまうのか、想像するだけで震えてしまう。
美しい見た目と柔和な雰囲気に反し、一度スイッチが入ると普段とはまるで違う表情をのぞかせるキャラたちについて紹介してきた。滅多なことでは怒らない彼らをキレさせた時点で、よほどのことをしているのだろうから、相手も自業自得ではあるのだろう。
当事者となって痛い目を見るのはご勘弁だが、傍から見ているぶんには彼らのギャップは非常に魅力的である。