■キン肉バスターを破り改良技で上回ってくる強敵

 1979年の連載開始から『週刊少年ジャンプ』の黄金期を支え、今なおシリーズの連載が続く、ゆでたまごの人気漫画『キン肉マン』には数々の強敵が登場するが、今回は「黄金のマスク編」で初登場したアシュラマンを紹介したい。

 悪魔超人の上位を占める「悪魔六騎士」のひとりであるアシュラマンは、その名の通り6本の腕と3つの顔を持つ超人だ。「笑い面」「冷血面」「怒り面」の3つを入れ替えることでファイトスタイルを変化させることができる。その実力はバッファローマンたち7人の悪魔超人ですら手も足も出ないほどで、作中でもそれを遺憾なく発揮した。

 キン肉マンと戦う前には、テリーマンを両者リングアウトによる引き分けとはいえ、内容的には圧倒していた。日本アルプスでのキン肉マンとの決戦では、天候を利用したウェザー・デスマッチを挑み有利に試合を進めるが、キン肉マンの火事場のクソ力と奇想天外な反撃により、3つの顔のうち2つを破壊されてしまう。唯一残った「怒り面」になったアシュラマンは、氷上バスター合戦での決着をもくろむ。

 そこでアシュラマンは、キン肉バスターとその改良版である新キン肉バスターをも易々と攻略してしまう。その攻略法は、キン肉マンの10倍の超人パワーを必要とするバッファローマンのキン肉バスター破りとは根本的に異なる。6本の腕を持つアシュラマンは、ホールドされていない腕を用いてキン肉バスターが決まる直前に手を着く、といういたってシンプルな方法でキン肉バスターを破ってみせたのだ。

 絵面的には地味だが、アシュラマンにしかできないだけでなく、再現性も高い完璧なものだった。

 しかも、そこからキン肉バスターをさらに発展させた上位互換技とも言える阿修羅バスターをキン肉マンに見舞い、底知れない強さを見せつけるのだった。

  主人公の必殺技を破るどころか、その進化系の技を使うという、かつてない強敵として描かれたアシュラマンは、その後もたびたび登場する人気キャラになっていくのだ。

 バトルを物語の中心に据えた少年漫画の人気は、主人公や仲間たちが到底かなわないと思えるほどの強さを持つ敵と「いかに戦い、勝利するか」をどれだけドラマチックに描けるかによって大きく左右される。乗り越えるべきハードルが高ければ高いほど、その過程ではハラハラドキドキする緊張感が高まり、実際に勝利したときのカタルシスも大きくなるのだ。

 だからこそ、「強すぎる敵」は、基本的には主人公サイドに感情移入しているはずの読者にとっても、時に魅力的ですらある。読者である少年たちは、ストーリーそのものとは別に、純然たる「強さ」にも畏怖とともに憧れをも抱いてしまうものだからだ。

 今回紹介した3人以外では、たとえば『ドラゴンボール』で悟空が放った20倍界王拳かめはめ波を難なく受け止めてしまったフリーザなども同様だろう。読者に絶望を与える憎らしい強敵がいるからこそ、主人公が依って立つ希望もまた光を増す。「必殺技が効かない!」という絶望を感じたシーンを思い出してみることで、当時は気付かなかった作品の魅力に気付けるかもしれない。

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