『うしおととら』白面の者に『キン肉マン』アシュラマン…必殺技が効かない!? 読者を絶望させた少年漫画の圧倒的な最強ボスキャラたちの画像
少年サンデーコミックス『うしおととら』第30巻(小学館)

 いつの世も読者である少年たちのハートをわしづかみにした少年漫画の名作の数々。友情を分かち合う仲間とともに修行や修練を積んで身に付けた必殺技によって強大な敵に立ち向かい、クライマックスの手に汗握るバトルシーンで見事打ち破ってハッピーエンドを迎える、というのがなんといっても王道の展開だろう。

 しかし、中にはそんな血と汗と涙の結晶である必勝必殺の技をも難なく跳ね除けてしまい、主人公はもとより、期待に胸を膨らませていた読者たちをも絶望させてきた強キャラたちがいる。今回は、そんな“絶望的なほどに強い”ライバルキャラから、特にインパクトの強かった3人を紹介しよう。

■必殺のアッパーカットを血を飲み込んで我慢

 まずは、『週刊少年ジャンプ』(集英社)で1988年~1997年の約10年間にわたって連載された不良漫画の金字塔、森田まさのり氏の『ろくでなしBLUES』から、「東京四天王」の一角として勇名を馳せた鬼塚を挙げたい。

 渋谷楽翠学園の頭を務める鬼塚は、トレードマークのランチコートを着こなす危険な男。高校生離れしたビジュアルのキャラクターばかりの『ろくでなしブルース』の中でも、ひときわ異彩を放つイカツい風貌だ。見た目の凶悪さはダテではなく、子分を2階から突き落としたり、暴走族のリーダーを鉄パイプで半殺しにしたりと、その性格も非常に凶暴かつ冷酷である。仲間からの信頼が厚い主人公の前田太尊とは対照的に、鬼塚はその圧倒的な力による恐怖で付き従う人間を支配しているのだ。

 そんな鬼塚と太尊は、太尊たちが通う帝拳高校のある吉祥寺での抗争で激突することになる。かなりの怪力の持ち主である鬼塚は、ボクシングの心得がある太尊と対等に渡り合うが、ついに太尊必殺のアッパーカットをアゴに食らってしまう。しかし、これで決着かと思いきや、なんと逆に太尊の拳が砕かれるという結果に!

 このとき実は鬼塚もアゴを割られていたのだが、口の中にあふれた血を飲み込み平然と立っているというとんでもないタフネスと、絶対に負けないという強い精神力を示した。

 アッパーカットで倒れないだけでなく、逆に太尊の拳を壊してしまうなんて……と、このシーンに衝撃を受けた読者も多いのではないだろうか?

 結局はこのタイマンに敗れた鬼塚が、太尊の「一人で生きてんじゃねーんだよ」という言葉を受けて心を改めて仲間を思いやれる男へと成長していく、という展開がこれまた熱い。

 強さに加えて人間的成長までをも見せつけ、結果的には作中でも屈指の人気キャラと言われるようになったのも納得だ。

■常識外れの強さはトラウマ級!

週刊少年サンデー』(小学館)にて1990年~1996年に連載された、藤田和日郎氏の連載デビュー作にして代表作のひとつが『うしおととら』だ。そのラスボスとして主人公の潮と相棒であるとらの前に立ちはだかる「白面の者」の絶望的なまでの強さは、少年漫画史上でもトップレベルのものと言えるだろう。

 物語序盤から倒すべき最強・最悪の敵と描写される大妖怪である白面の者は、あらゆる妖怪の中でも別格で、物理的な強さはもちろんのこと、憎しみや猜疑心など相手のネガティブな感情につけ込んで自滅へと追い込む精神攻撃的な手練手管はまさに悪辣そのもの。日本中の人間や妖怪から潮ととらの記憶を消して孤立させ、そもそも戦う力を集められない場面は、ある意味では直接戦って叩きのめされるより数段恐ろしい。

 その後も、作中の妖怪や人間たちが束でかかってもかなわないほどの力の差を見せつける白面の者は、今まであらゆる妖怪を倒してきた潮の獣の槍を砕き、とらをもあっさりと退けてしまう。本来は白面の者を倒すために作り出された武器であるはずの獣の槍が全く通用しない……これほどまでに絶望を感じるシーンもそうそうないだろう。

 しかし、これはもう誰が何をしても意味がない、と思わせるほどの圧倒的な力を白面の者が持っていたからこそ、その結末を迎える最終決戦がより一層の輝きを放ったことは間違いない。少年漫画で印象的だった敵キャラとして真っ先に挙げ「トラウマである」とまで評する人も数多く、その強大さがいかに恐怖をもって受け入れられていたのかを物語っている。

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