■余命宣告を受けながら夢を追いかける『満月をさがして』
同じく『りぼん』で掲載されていた、種村有菜氏による『満月をさがして』も、なかなかにシリアスな設定だった。
本作の主人公・神山満月は、歌うことが大好きなのに喉の病気を患っている少女。まだ12歳の彼女だが、ある日突然現れた死神に“余命1年”と宣告されてしまう。その後満月は死神の力で「フルムーン」という16歳の姿へ変身し、健康な喉を得て売れっ子の歌手になっていく……というファンタジー作品だ。
歌手を夢見ているのに喉の病気を抱えており、治療すると声帯を失ってしまう。しかし、治療しないままだと“余命1年”というのは、12歳の少女にとってあまりにも過酷すぎるだろう。さらに、満月は交通事故で両親が他界しているという背景も……。ここまでのシリアスな設定は、少女漫画には珍しいのではないだろうか。
さらに満月に余命を告げにきた死神たちにも注目したい。彼らもそれぞれ「死神になった理由」があり、つらい苦悩や過去が描かれていた。満月をはじめ、それぞれのキャラクターが背負っているものや、彼らの行く末も本作の見どころの1つとなった。
ちなみに、原作とアニメ版で結末が違ったことでも話題となった本作。興味がある方は、どちらもご覧になってみてはいかがだろうか。
それぞれ過酷な運命を背負っているキャラクターたち。シリアスな設定は、物語により深みを与えるものになっている。上記の作品のように、現代の問題ともリンクしているものもあり、フィクションだと分かっていても感情移入して複雑な気持ちになることも……。
読者の感情を揺さぶるこれらの名作たちだが、一味違う少女漫画に興味がある方はぜひご覧になってみてはいかがだろうか。