『赤ちゃんと僕』『こどものおもちゃ』など…今思うとシリアスすぎる設定だった“かつての名作少女漫画”3選の画像
『赤ちゃんと僕』第2巻 (白泉社文庫)

 キラキラとした恋愛模様や青春が描かれることが多い「少女漫画」。読者の心を癒してくれる作品が多いジャンルではあるが、かつての名作をあらためて見てみると「かなりシリアスでは?」と驚いてしまうような設定が描かれていることがある。

 少女漫画らしくないシリアスさは、ときに物語にスパイスを加えてくれる。今回は「今思うとシリアスな設定」で描かれた作品を3作品紹介していこう。

■母親を亡くした小学生が弟の世話をする『赤ちゃんと僕』

花とゆめ』(白泉社)で連載されていた、羅川真里茂氏による『赤ちゃんと僕』は、今、話題の「ヤングケアラー」を題材とした作品だ。ヤングケアラーとは法令上に定義されていないものの、“本来大人が担う家事や家族の世話などを日常的に行ってる子ども”(参考:厚生労働省)のことをいう。

 本作は小学5年生の榎木拓也が、2歳の弟・実の世話をしながら奮闘していく日常を描いたホームコメディーだ。

 榎木家は母・由加子が交通事故で亡くなってしまい、父・春美と拓也で手分けしながら家事と育児をしている。まだ小学5年生の拓也も父を助けようと懸命に努力するのだが、もちろんうまくいくことばかりではなく、弟・実につらく当たってしまうなど苦悩が描かれていた。

 基本的にはほのぼのとした作風の本作だが、まだ幼い拓也が家事や育児を担う様子はまさに「ヤングケアラー」だと思う。保育園へ実を迎えに行き、同級生の友達と遊ぶときも実と一緒。拓也自身もまだまだ子どもだというのに、彼に課せられた責務は小さな体には重たい。

 本作では、“母親の死”というどうしようもない出来事により、拓也は「ヤングケアラー」になった。幸いなことに家族関係は良好で、父・春美も協力的。家族一丸となって日々を生き抜こうと前向きな作品ではあるものの、拓也の置かれた環境については考えさせられる作品だと思う。

■育児放棄や家庭崩壊も…!?『こどものおもちゃ』

 次は、小花美穂氏の『こどものおもちゃ』を紹介したい。本作は芸能活動を行いながらも普通の小学校生活を送る主人公・倉田紗南と、クラスメイトたちのドタバタ青春物語。

 “こども”社会を中心に描かれているものの、子どもらしからぬダークな問題にも切り込んでいくことがあり、ほのぼのとした普段の様子からは一変するエピソードが多いのが特徴だ。

 もっともシリアスな設定と言えるのが、紗南の出生の秘密だろう。彼女は恵まれた容姿と明るい性格で子役タレントとして大活躍しているが、実は生後間もなくして公園に捨てられていたというショッキングな経歴をもつ。

 現在の母親である実紗子に拾われ、今に至っている彼女。紗南と実紗子は本当の親子のように仲良しで、頭にリスを飼っているという変人を極める実紗子と、お笑い気質の紗南の掛け合いは、そんなシリアスな設定を吹き飛ばしてくれるような面白さがあった。

 また、同じく家庭環境が複雑なのが紗南のクラスメイトで問題児の羽山秋人だ。彼は端正なルックスでファンからの人気も高いキャラだが、当初は誰にでも突っかかっていく、問題ばかり起こす生徒だった。

 というのも、彼を産んですぐに母親が亡くなってしまったことから羽山家の生活は一変……姉・夏美は、秋人を「(母親を殺した)悪魔の子」呼ばわりし、ひどく当たっていた。そんな環境もあってか羽山はクラスの男子を操って教師をいじめたり、女子たちから怖がられるような存在になってしまっていた。

 羽山の家庭問題は紗南の尽力があり解決し、結果的に好転するわけだが……小中学生向けの少女漫画雑誌『りぼん』(集英社)で連載されていた作品としては、かなりシリアスなバックグラウンドを持つキャラが多かったように思う。

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