■奇行といえばやっぱりこの人‼ 「桜木花道」
最後に挙げるのは、本作では対戦相手にとってもっとも不気味であろう存在、主人公の桜木花道である。桜木には常人には予想もつかない言動がとにかく多く、試合中の奇行や迷言は枚挙に暇がない。
たとえば山王戦、桜木は「ポール」こと野辺将広(こうやって毎回あだ名をつけるのも、桜木の奇行の一つと言えるかもしれない)のスクリーンアウトをかいくぐることができずにいた。そこで思いついた奇策が、審判にバレないように後ろからこっそりポールのユニフォームの裾を引っ張ること。その甲斐あって、桜木はリバウンドを制することができた。
そして、その次のプレイでも、後ろから軽くユニフォームを引っ張る桜木。だが、今度は引っ張られないようにと、ポールは自身のユニフォームをぎゅっとつかんだ。すると桜木は「フェイクだ!」とすかさずポールの前に回り込み、こぼれ球をゴールに放り込むのだった。終始振り回されっぱなしのポールが少し気の毒にもなる。
また地区予選最終戦、陵南高校との試合でも有名な奇行シーンがある。赤木のダンクが弾かれたあと「ゴリラダンクⅡーー‼」と銘打ってダンクに臨んだ桜木は魚住にブロックされ、会場中が引くほど激しく叩き落とされてしまう。この屈辱に、桜木がキレて乱闘を起こすと察知した桜木軍団は、魚住のお面をかぶって桜木をひきつけるのだ。その読み通り、桜木は試合そっちのけでお面めがけて突進していく。
このときマネージャーの彩子は審判に「頭を打ったんだと思います」「一時的な幼児退行現象かも」という説明でフォローしているが、対象を見つけるや否や素早く飛び出して追いかけていく桜木の姿は、幼児退行というよりはもっと原始的な、言うなれば映画『ジュラシック・パーク』シリーズに登場するヴェロキラプトルさながらの動きで不気味であった。
ちなみに、桜木は山王戦でも流川に対してキレそうになる場面があったが、そのときは怒りを堪えるために必死に自分の両頬をつねっている。陵南戦からの精神的な成長が見られる場面ではあるが、それを目の前でされた河田美紀男は「ひっ」と思わず後ずさり。やはり不気味であることに変わりはない。
『SLAM DUNK』で見られる、選手たちの不気味な様子についてまとめてみた。だが、どれをとっても背景にあるのは選手たちの試合にかける熱い思いであり、結局は迷言も奇行も全部ひっくるめてカッコイイのかもしれない。
そんな彼らは、今回の新作映画ではどんな姿を見せてくれるのだろうか。非常に楽しみだ。