『ベルばら』でフランス革命『あさきゆめみし』で源氏物語…1コマの情報からハマる!「歴史・古典の勉強になった少女漫画」3選の画像
劇場版『ベルサイユのばら』(C)池田理代子プロダクション/ベルサイユのばら製作委員会

 昔の子どもは親や先生から「漫画ばかり読んでいないで勉強しろ」とよく言われた。だが、漫画には友情や勇気を教えてくれる名言があり、これまでの価値観が覆されほどの力を持つ作品もある。『キャプテン翼』や『SLAM DUNK』に影響を受けたプロ選手は少なくないし、『ヒカルの碁』をきっかけに年配の方ばかりの囲碁サロンに若年層が押し寄せるなど数え上げたらキリがない。

 何ページにもわたって説明される参考書よりも、作中で描かれたたった「1コマ」が多くの情報をもたらす力を持つ場合もある。そのため、物語を楽しみながら自然とある分野の知識が身に付いたり、作品を通して興味を持つことでさらに学ぶことにも繋がるわけだ。 

 特に少女漫画ではその繊細な絵柄を武器に、人物や背景が丁寧に描かれている。当時の街並や人々の服装などが細かく描かれているそれらから、歴史や古典へ興味を持つということも珍しくない。今回は「歴史・古典の勉強になった少女漫画」を紹介したいと思う。

■『ベルサイユのばら』動乱のフランス革命を走る抜けたオスカルの愛と苦悩の決断

 池田理代子氏の『ベルサイユのばら(通称、ベルばら)』は、1972年から少女漫画雑誌『週刊マーガレット』に約1年半の間連載されていた作品だ。2022年は誕生50周年を記念した展示会の開催や劇場アニメの製作発表などがあり、いまだ衰えぬ人気で多くのファンを魅了し続けている。

 伯爵家の末娘ながらも男性として育てられたオスカル・フランソワ・ド・ジャルジェが、フランス王室へと嫁いできたマリー・アントワネットやスウェーデンの貴族ハンス・アクセル・フォン・フェルゼンとの運命的な出会いを経て、貧困にあえぐ民衆のために革命へと身を投じる物語。

 主人公のオスカルは池田氏が生み出したキャラであるが、そんな彼女と深い絆で結ばれたアントワネットやフェルゼンは「歴史上の人物」で、同作では創作上の人物の他に多くの実在の人物が登場している。嫁いだばかりのアントワネットと火花を散らしたデュ・バリー夫人、彼女は多くの漫画に登場する「悪女」のテンプレそのものでありながら実在の人物だ。

 同作で描かれた「首飾り事件」は1785年のフランスで実際に起きた詐欺事件で、作中でも描かれていたアントワネットに対する民衆の不満が噴出するきっかけにもなった。それに関わったジャンヌ・バロアは池田氏の創作であるロザリーの異母姉の設定だが、実在の人物「ジャンヌ・ド・ラ・モット・ヴァロア」をモデルに創作を加えたキャラクターだ。

 このように、作中では大筋の歴史的出来事に実在の人物が多く関わっているため、オスカルの苛烈な生き様に心を揺さぶられながらも読み進めていくうちに、頭の中にフランス革命の概要がすんなりと入っていくのである。

 また、天才作曲家ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトが幼いアントワネットにプロポーズしたなど、随所に入れられた小ネタも楽しめる作品だ。

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