■『デビルマン』不動明に残された唯一の良心「牧村美樹」

「トラウマとなったヒロインの死」と言われて思い出すのが、永井豪氏による『デビルマン』(講談社)のヒロイン・牧村美樹である。

 主人公・不動明は美樹の家に居候しており、彼女も明を慕っていた。明がデビルマンになった理由は、人類を滅ぼそうとする「デーモン」と呼ばれる悪魔の軍団を阻止するため。デビルマンとなった明は次々と来る悪魔の刺客を倒していくが、あるとき、力尽き倒れてしまう。

 かろうじて一命を取りとめた明だが、著名な科学者の一言により、世界では人が人を惨殺しだす悲劇が起こっていく。

 明は美樹を守ろうと牧村家へと駆けつけるが、すでに彼女は近隣住民によって惨殺されていた。しかも、明が目にしたのは槍の先に刺された美樹の生首だったのだ……。その後、明は近隣住民を焼き尽くし、人類のためではなく、ただ生存をかけて最終決戦に挑むことになる。

 見た目は恐ろしくとも、最後まで苦悩しながら人間を救ってきたデビルマンに対してあまりにもむご過ぎるヒロインの死は、当時の読者に対しトラウマ級の描写であったことは間違いない。大人になった今でも非常に考えさせられる話である。

 

 漫画でたびたび描かれる「ヒロインの死」は、主人公と作品に大きな影響を与える力がある。彼女たちの死によって、主人公がより強くなったり、より深い考えへと辿り着いたり、覚醒したり……など、物語の大きな転換点へと繋がることが多い。

 今回紹介した作品のほかにもヒロインが非業の死を遂げる作品は沢山あるので、ぜひ探してみて欲しい。

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