車田正美氏の人気漫画『聖闘士星矢』を原作としたハリウッド映画『ナイツ・オブ・ザ・ゾディアック』の特報予告が解禁となった。同作は2023年に全世界で公開予定の実写化作品で、主人公の「SEIYA」を初のハリウッド映画主演となる新田真剣佑が担当する。
予告映像を見て「かっこいい」「アクションに期待が持てそう」など、SNSではさまざまな声が聞かれたが、ハリウッドによる最新鋭の技術で撮影される今作は、日本のファンが知っている『聖闘士星矢』とはまた違った作風の作品となりそうだ。
日本の漫画が海外で実写化される際、まったく別物の作品になるケースもファンとしては覚悟をしておかないといけない。だが『聖闘士星矢』といえば1986年にテレビアニメ化されており、同作は設定やエピソードが漫画とは異なる点が多いことでおなじみの作品でもあった。
これは『聖闘士星矢』が異例のスピードでアニメ化されたことが原因。そのため、原作にはないアニメオリジナルのキャラやエピソードが生まれ、それがまた違った魅力を作り出していたのだ。
そこで今回は、1986年の「アニメ版」と「原作漫画」とで大きく違った点を改めて振り返ってみたいと思う。
■漫画より先に別人が登場してしまったキグナス氷河の師
青銅聖闘士のキグナス氷河はロシア人の母を持つハーフの少年だ。極寒のシベリアで過酷な修行により氷の闘技を身につけ、永久凍土を砕き「白鳥星座(キグナス)の聖衣」を手に入れた。
そんなキグナス氷河の「師匠」として、アニメではオリジナルキャラクターである「水晶聖闘士(クリスタルセイント)」が登場。彼は実力がありながらも星座の加護を受けていない“非正規”の聖闘士だった。そしてその後、教皇に洗脳され悪事を働いていた彼は、弟子だった氷河に倒されてしまう。
こうしたアニメオリジナルのエピソードが描かれた後に、車田氏が原作で氷河の「師匠」として「水瓶座のカミュ」を登場させてしまう。アニメと原作とで師匠が違うという事態になったが、アニメで氷河がこの矛盾を回避。カミュに「あなたは水晶聖闘士の師、つまり俺の師も同然の方です」……と、少しややこしいセリフながらも後付けにより「実はカミュは水晶聖闘士の師」という関係が明らかにされた。
さらに、氷河の「師」問題は原作でも起きている。母親が眠る船を海底深くに落とした人物こそが彼の「師」だが、『ジャンプ』掲載時のシルエットは間違いなく「蠍座の聖衣=ミロ」だった。ところがコミックスではセリフや擬音などが修正され、例のシルエットも「水瓶座の聖衣=カミュ」となっていたのである。
車田氏は後からたびたび修正を入れており、『ジャンプ』掲載時は素足に直接聖衣を装着していた「カメレオン星座のジュネ」が翌週号やコミックスではタイツを履いていたことなどもあった。子どものころにジャンプの切り抜きと比べながら、修正箇所を探すのが筆者のひそかな楽しみだった。