■科学と財力とが生み出したアニメオリジナルの鋼鉄聖闘士

 天秤座を除いて、聖闘士の戦いは自身の肉体のみが基本であり、己の「小宇宙(コスモ)」を燃やすことでビッグバン級の力さえ生み出すことも可能。

 ところが、そんな聖闘士の根本を揺るがすような存在がアニメ本編はおろかアイキャッチにも登場した。それがアニメオリジナルキャラである「スカイクロスの翔」「ランドクロスの大地」「マリンクロスの潮」の3人による「鋼鉄聖闘士(スチールセイント)」である。

 彼らは星矢たちをサポートするため城戸光政の指示で養成され、グラード財団の財力と科学力を結集させた「機械の聖衣(鋼鉄聖衣)」をまとう非正規の聖闘士だ。聖闘士の条件でもある「小宇宙」を身につけてはいないが、最先端の器具が揃ったジムで鍛えた肉体と機械の補助で「青銅聖闘士レベルの力」を身につけていたのだ。

 また、「鋼鉄聖衣」は城戸光政が所持していた「射手座聖衣」を分析して作られており、それぞれ「巨嘴鳥座」「子狐座」「旗魚座」の星座をモチーフとしたデザインとなっている。

 幼い頃に過酷な土地に送られ青銅聖衣を手に入れた星矢たちや、同じ非正規でありながら導く星座がなく微妙な聖衣のクリスタルセイントが少々気の毒に思えた。

■ファンも驚愕!? 物議を呼んだメインキャラたちの聖衣デザイン変更

 最後に取り上げるのが、アニメ化した際に最も驚いたメインキャラたちの「聖衣」のデザインだ。

 原作における青銅聖闘士の聖衣はシンプルで無骨なデザインだったが、これがアニメ版ではアーマータイプのものに変更。たとえば星矢はペガサスの頭がついたメットをかぶり、大きなプロテクターと化した白色の聖衣を身にまとっていた。さらに個々のイメージカラーがあり、下手をしたら金色に輝く黄金聖衣よりも派手になっている。

 原作のキグナス氷河の聖衣には鋭利な形をした白鳥の頭がついてるが、アニメでは白色の頭に黄色い嘴をした白鳥がついていたため、それが「おまる」っぽく見えてしまう。またアンドロメダ瞬はアメフトのような大きなヘルメットをかぶっており、イメージカラーもショッキングピンクだったりと、筆者を含む当時の女性ファンから驚きの声があがった。

 ここに挙げた以外にも、印象に残るアニメでの改変ポイントはまだまだある。原作で涙した射手座宮のエピソードがアスレチック仕様となったり、教皇アーレスの設定が二転三転したりと、子ども心に不思議に思ったものだ。だが「アスガルド編」はアニメオリジナルながら人気の高かったエピソードで、氷河のアニメオリジナルの技「オーロラサンダーアタック」を子どもの頃に真似をしながら楽しんだという人も多いだろう。

 連載開始から一年を待たずしてスタートしたアニメ『聖闘士星矢』。公式サイトにも「聖衣のデザインやエピソードにはアニメ版オリジナルのアレンジが施され、原作とはまた違った味わいを生んでいる」と書かれている。当時の『週刊少年ジャンプ』のいきおいとスピード感が生んだ80年代を代表する傑作と言えるだろう。

  1. 1
  2. 2
  3. 3