■カメラを見る怪人と目があった「雪夜叉」
「雪夜叉伝説殺人事件」では4人の人物が殺害されているが、筆者のトラウマとなっているのは、第一の被害者である加納りえの殺人だ。
これは、美雪の代理としてテレビ局のアルバイトをすることになった金田一がドッキリ番組のロケで北海道の背氷村を訪れるというエピソードで、そこで事件が発生する。
この殺人事件では、加納に仕掛けたドッキリによって、殺人の恐怖が倍増してしまうのだ。ドッキリを実行するため、加納だけを別館に置いてその他のメンバーは本館に移動。その後、別館に仕掛けていたカメラで加納の姿を鑑賞し、雪夜叉の恰好をしたスタッフの綾辻真理奈が加納を驚かせるという趣旨だった。
この事件の怖いところは、ドッキリ用にカメラが用意されていたことで、他のキャラがカメラを通して殺人の様子をリアルタイムで目撃してしまうという演出力だ。
彼女の殺害は、斧を頭に振り下ろすという残虐極まりない方法で行われた。これだけで非常に恐ろしいが、犯行後にその場を去ろうとした雪夜叉が、カメラに向かって振り向くのだ。これがまるで雪夜叉と目が合ってしまったように錯覚するコマ割りになっている。漫画を通して、自身もその殺人を目撃したような錯覚に陥った読者も多いのではないだろうか。
以上、『金田一少年の事件簿』の恐ろしすぎた怪人たちを紹介した。どれも幼かった筆者のトラウマになっている事件だ。子どものころにホラー作品を読むような気持ちでおっかなびっくり読んでいたのだが、大人になってから読み返してみると、事件ごとの悲しいストーリーやトリックの重厚さ、キャラクターの奥深さを再発見できる。幼かったころの記憶が薄れかけている人は、『金田一少年の事件簿』を再び手に取り震えてほしいところだ。