連載開始から25年を迎えた尾田栄一郎氏の人気マンガ『ONE PIECE(ワンピース)』。最序盤のOP『ウィーアー』の冒頭で語られるように、“受け継がれる意志”はしっかりと漫画内でも描かれている。
そこでこの記事では、「受け継がれる意志を感じた感動技」について紹介したい。
※以下には、コミック『ONE PIECE』の一部内容が含まれています。ストーリーを解説するのが本記事の主目的ではありませんが、気になる方はご注意ください。
■杯を交わし合った義兄弟の形見の技…サボの“火拳”
最初に紹介するのは、ドレスローザ744話のコロシアム戦。決勝戦ではなんとフィールドが崩壊し、ルーシーに扮したサボ以外の参加者全員が逃げ出す事態に。全員場外で優勝扱いとなったサボは優勝賞品の“メラメラの実”を手に入れた。この“メラメラの実”は、サボとルフィの義兄弟である「エース」の形見だ。
能力を手にしたサボは崩れゆく会場を足場に空高く飛び上がると「エース! 貰うぞお前の技…!!!」「“火拳”!!!」と、燃え上がる右手を力強く下ろしたのだった。
「ドォン!!」とすさまじい効果音とともに放たれる“火拳”は、まさにエースを彷彿とさせる迫力があり、アニメ版ではよりその感動が視聴者に伝わっただろう。
それからというもの、サボはルフィたちの味方として戦いをサポートしていく。彼が“メラメラの実”の能力を発動するシーンを見るたび、エースを思い出して感慨深くなってしまうファンは筆者だけではないと思う。
麦わらの一味へ別れを告げる際には、「———ほんじゃ…ルフィにゃ手ェ焼くだろうが…よろしく頼むよ!!」と、そう言い残したサボ。エースも同じような言葉を一味に伝えていたが、その言葉からも弟・ルフィを見守っていくという「受け継がれる意志」を感じ取れたシーンだ。
■恩人コラソンを忘れない…ローの“お前の影響で出る音は全て消えるの術”
次は、1040話のワノ国編から。トラファルガー・ローがビッグ・マムと戦った際に発動した「“お前の影響で出る音は全て消えるの術”」を紹介したい。ローはパンクハザード編からルフィたちと同盟を築いてきた一人であり、今後どのような関係性になっていくのか気になる人物だ。
そんなローの過去は壮絶なものであった。幼いころ、ドンキホーテ・ドフラミンゴ率いる海賊団にいたローは不治の病に命を蝕まれていた。しかし紆余曲折あり、ドフラミンゴの実の弟である「コラソン」ことドンキホーテ・ロシナンテに命を助けられ、“オペオペの実”の能力者となる。しかしその際、コラソンはローを守って命を落としてしまうのだ。
コラソンは実の兄であるドフラミンゴの暴走を止めようと奔走し、さらには病からローを救い愛を教えた人物だ。そんな彼は“ナギナギの実”の能力者で、あらゆる音を遮断する能力を持っていた。そう、ローの“お前の影響で出る音は全て消えるの術”は、コラソンの意志を受け継ぎ、開発された術だということがわかる。
コラソン亡き後、ローが“オペオペの実”をどのようにして自分のモノにしていったのか、その始まりを感じられるような気がしたのは筆者だけではないだろう。
また、ローの海賊団の名前は“ハートの海賊団”というが、コラソンはドンキホーテファミリーにおけるマークが「ハート」だった。さらに、そもそも「コラソン」とはスペイン語で“ハート”を表すという。そんなところからも、恩人であるコラソンの意志を受け継ぎたいというローの心が感じられる。
『ONE PIECE』にはこういったダブルミーニング的な意味も多く隠されており、示唆する内容を発見したときのワクワクが堪らない。