■制裁ビンタに言葉で追い討ちをかけたセイラ
最後に紹介するのは、第2話「ガンダム破壊命令」から、セイラ・マスの罵りビンタである。冒頭で紹介した第9話「翔べ!ガンダム」に匹敵するほど有名なビンタシーンだから、ガンダムファンならよくご存じだろう。
ジオンのザクに攻撃を受けたサイド7から出航するため、ホワイトベースでは避難民や負傷者の乗船を急いでいた。セイラとフラウも民間人でありながら捜索活動の手伝いを行なっていたが、そこへ何食わぬ顔でホワイトベースに乗り込もうとしたのがカイ・シデンだった
フラウが「あ、もう他の人いませんでした?」と声をかけると、カイは「し、知らねぇな。爆撃の跡を避けながらようやく辿り着いたんだ」と自分だけが大変な目に合ったかのような口ぶりで話す。
リュウ・ホセイが負傷兵に肩を貸している様子を見ても「の、乗るのかい?(エレベーターに)」と疎ましそうに言うだけで、手を貸そうともしない。
この態度に怒ったセイラは、カイに近づくとビンタ一閃。「それでも男ですか。軟弱者」と罵った。さらに、「あなたみたいな人、サイド7に独りで残っているといいんです」と、死んでしまえと言わんばかりに追い打ちをかけるのである。
結果、カイはリュウに手を貸し、負傷兵の運搬を手伝うのであった。
『機動戦士ガンダム』の舞台である宇宙世紀0079は過酷な戦時下であり、ホワイトベース隊は民間人出身が多く、年齢も10代から20代と若かった。そして、アニメ放送された昭和という時代——。「ビンタ」シーンに垣間見える背景や登場人物たちの成長も『機動戦士ガンダム』の魅力の一つといえるだろう。